今さら聞けない原価管理 プロが教える原価管理のコツ ~中級編~

原価 原価管理 原価計算 原価費目初級編に続いて、「今さら聞けない原価管理」シリーズの中級編を掲載します。

初級編では、主に原価や原価管理の概要や、原価管理を行うことでどういった効果があるのかなどを具体例も交えながらご紹介しました。
中級編ではもう一歩踏み込んで、原価改善のためのヒントとなる考え方や原価計算方法等を中心に展開していきたいと思います。

原価管理の重要性を認識していて、すでに原価管理に取り組んではいるものの、なかなか成果が上がらないといった組織・企業があれば、是非本記事を参考に、新たな考えを取り入れていただければと思います。

※2018年2月1日更新

 

 

1.原価とは何か

ここでは、初級編でも解説した原価という言葉の意味を、再度おさらいしておきます。
入門編でも詳しく解説していますので、そちらも併せてご覧下さい。
「今さら聞けない原価管理 プロが教える原価管理のコツ ~入門編~」

原価とは「製品や商品を作るのにかかった費用」のことで、モノの値段の基礎となる金額のことを指します。
主な費目としては材料費、労務費、経費などに分けることができます。

それぞれを簡単に見ていくと、材料費は工場や事務所において物品の使用によって生じた金額です。
労務費は製品を作るために使用した労働力によって生じた金額のことで、人件費という考え方もできるでしょう。
経費は上記2つの材料費、労務費以外に発生したコストのことで、具体的にはオフィス代や水光熱費、機械の減価償却費、旅費交通費、通信費などが当てはまります。

こうした費目ごとの原価を把握しておくことが大切で、そうすることで、どこに原価改善の余地があるのか見えやすくなります。

それぞれの費目は直接費と間接費に分けることができ、それぞれの区分にしたがって管理していくことによる意味を、次の題目でご紹介します。

 

2.原価を直接費と間接費に分けて管理することの意味

原価 原価管理 原価計算 原価費目

上記の題目で、原価の費目には主に材料費・労務費・経費の3つに分けられるということをご紹介しましたが、その中でもさらに、直接費と間接費に分けることができます。

つまり、直接材料費、間接材料費、直接労務費、間接労務費、直接経費、間接経費の6費目に分割することができます。
区分が多くなって管理が大変だという印象を受ける方もいるかもしれませんが、それぞれの費目を直接費と間接費に分けることには、大きな意味があります。

というのも、直接費は製品1個あたりにいくらかかったのかが簡単にわかりますが、間接費は複数製品に共通的に発生するので、製品1個あたりの費用を計算するのに、何らかの基準を用いて割当計算する必要があるためです。

直接費もそうですが、間接費がわからなければ、コストカットの判断が不明瞭になってしまいます。
そういった意味で、双方の費目に分けて原価の算出を行っておくことが大切です。

間接費を算出するための何らかの基準のことを配賦基準と言い、その基準を用いて割当計算を行うことを配賦と言います。

例えば、工場全体における製造間接費が10万円だった時に、製品Aを製造するためにかかった時間が8時間、製品Bを製造するためにかかった時間が2時間だった場合は、製品Aの製造間接費は8万円、製品Bの製造間接費は2万円という配賦になります。

製品A:10万円÷(8時間+2時間)×8時間=8万円
製品B:10万円÷(8時間+2時間)×2時間=2万円

これは製品を製造するのにかかった時間を基準とする配賦の一例で、他にも、製造に関わった人員数や直接費用(材料費)、直接工数、設備稼働時間等を基準として配賦を行うこともできます。

それぞれの事業に合った配賦基準を用いることで、適切な製造間接費を割り出すことが大切です。

 

3.原価管理のさまざま

原価管理を行うことで、さまざまな視点から数値やデータを分析することができるようになります。

まず原価管理は、原価計算を行うことによって、原価の見える化を行うことからスタートします。
原価計算の方法には標準原価計算や実際原価計算などがあり、それぞれを実行することで、工程別(作業別)原価や部門別原価を割り出すことが可能となります。

続いて、損益計算を行うことで問題の早期発見につなげることができます。
製品別損益計算、部門別損益計算などに対応することで、ミクロ、マクロそれぞれの視点から損益分析を行い、異常値の早期発見につなげます。

原価管理は資材調達、在庫管理、会計処理などさまざまな業務領域と関係しているので、それぞれの領域の無駄なコストを一元的に把握・削減できる可能性が広がります。

 

4.原価企画の重要性

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すでに原価管理に取り組んでいて、一定のノウハウを蓄積している組織にとっては、原価を削減していくことが徐々に難しくなってくる時期が来るでしょう。
原価管理を意識して、実行し始めの段階では、それまで気づかなかった無駄なコストが見つかり、順調にコストカットにつながるものもあるかもしれません。

しかし、原価管理を開始して一定期間が過ぎると、それ以上無駄を削減するのが難しいという時期に直面することがあります。
そんな時に見直すべきは、”原価企画”と言えましょう。

原価企画とは、製品の企画・設計の段階において、顧客のニーズに合った「原価・機能・品質」を設定し、これらの目標を中心として開発・生産・物流・販売・経理等の関連部門が協力して総合的な原価削減を図るための原価管理の手法です。

原価企画の目的は、製品の企画・設計段階における原価削減をすることにあります。
企画・設計の段階から原価削減を行うことで、企業経営として、革新・改善・維持という機能を果たすことを期待されています。
原価企画からスタートして、原価改善につなげ、その状態を維持する原価維持という段階に進むことができれば、原価管理はある程度成功といっても良いでしょう。

そのための第一歩が原価企画であり、多くの部門との連携プレーによって、無駄の洗い出し・削減を図っていくことが大切です。

 

5.個別原価計算と総合原価計算

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ここでは具体的な原価計算の手法をご紹介していきます。

題目にもあるように原価計算方法は大きく2つの方法に分けることができて、1つは個別原価計算、もう1つは総合原価計算です。
どちらが良い悪いというわけではなく、それぞれの計算方法に合った方を用いることで、より正確な原価管理につなげることができます。

それでは、2つの計算方法について具体的に見ていきたいと思います。

まず個別原価計算について、ご紹介します。
こちらは、顧客からの注文によって製品を製造する場合に用いられる計算方法です。

つまり、生産物は種類、規格がそれぞれ違うので、原価もそれぞれで異なるため、個別に原価計算する必要があるということになります。
世界に一つだけのもの、オンリーワンのものを作る際に用いられる計算方法という考え方もできるでしょう。

例えば、野球選手のグローブを製造する際には、選手の手の大きさやポジションなどによって作るグラブは変わってきます。
選手によって色のこだわりや柔らかさ、重さ、握ったときの感触などの要望が異なるので、生産者側は選手からヒアリングしながら、その選手独自のグラブを作っていくことになります。

このように、お客様からの注文が発生して以降、生産者に製造をお願いし、実際に製造から納品にいたるプロセスにおいて発生する材料費や労務費、経費などの費用を合算して計算する方法を個別原価計算と呼びます。

個別受注生産企業では、顧客からの注文を受けた後、製品の製造を指示する特定製造指図書(製造命令書)が設計図に基づいて作成されます。
個別原価計算では、この製造指図書に付与された番号ごとに原価を集計していくので、製造指図書は原価算定時に中心的な役割を果たします。

個別原価計算の計算式は以下の通りです。

  • 直接材料費+直接労務費+直接経費+製造間接費=単位当たり製造原価

続いては、総合原価計算について、ご紹介します。
総合原価計算の方が、なじみのある方が多いのではないでしょうか。
こちらは、顧客からの注文ではなく、製造者側で定めた1日に売れる量(販売可能数量あるいは販売目標数量)を予想して、製造・販売する際に利用する計算方法です。

例えば、パンなどの食料品によく用いられますが、それまでのデータを活用して、1日に売れる量を予想してパンを製造します。
この時、パン1個の金額は、製造に要した材料費、労務費、経費を合計して、その合計金額を実際の完成数量で割り算することで算出します。

このように、顧客からの受注ではなく、製造者側の能動的な動きで製造を行う際に用いる計算方法を総合原価計算と呼びます。

総合原価計算は、大量見込生産に適用される原価計算方法であり、1種類の製品を大量に製造し続けるという特徴があります。

こうした製品は小型かつ安価なので、製品1個または1単位ごとの原価を算出することはできません。
そこで、発生したすべての原価を期間(一般的には1ヶ月単位)で集計し、その期間に完成した製品数量で計算することで単位当たりの原価を算出します。

総合原価計算では、同種の製品が継続的に大量生産されるので、一定期間に区切って、その間に生じた原価総額(=完成品総合原価)を計算します。
また、仕掛品(=製造途中にある製品)の計算も入れることがあり、その場合には、未完成品の原価(=月初仕掛品原価)に当月投入の材料費、労務費、経費(=当月製造費用)を加算し、当月の未完成品原価(月末仕掛品原価)を引き算することで、計算します。

これを完成品の総数量で割り算すると製品1個当たりの原価(=単位原価)を算定することができます。

仕掛品に対する計算が、やや複雑な部分もありますが、慣れてしまえば毎月同じサイクルに則って計算をするので、それほど原価の算出に苦戦することはないでしょう。

以下、総合原価計算の計算式です。全部で3段階にわたって算出します。

  • 直接材料費+直接労務費+直接経費+製造間接費=当月製造費用
  • 月初仕掛品原価+当月製造費用-月末仕掛品原価=完成品総合原価
  • 完成品総合原価÷完成品数量=単位当たり製品製造原価(完成品単位原価)

 

まとめ

原価管理を行うには、各々の費目にもとづいて、原価計算をする必要があります。
それぞれ文字で見ていくと小難しいような気もしますが、一旦計算手法を確立して、それを継続的に行っていけば、それほど難解なものではありません。

総合原価計算などでは、算出された数値をもとに、原価改善を行っていくことが大切です。
例えば、同じ製品を1ヶ月に100万個作るとしたら、単位当たりの製造原価を0.1円下げるだけでも10万円/月のコストカットになります。
0.1円というちょっとした改善でも、製造個数が多い場合には、年間120万円の経費削減になるという考え方をすることもできます。

そうした少しずつの改善の積み重ねが、最終的に大きな利益につながる可能性を秘めているので、原価管理を行った先に、改善に向けた議論と実行を伴うことが大切です。

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