減価償却とは?基礎知識からメリット・デメリット、資産ごとの耐用年数などをわかりやすく解説

減価償却は経理が会計処理で扱うもののため簿記の知識の範囲ですが、会社経営に携わる経営者や役員、個人事業主なども知っておくべき会計処理方法のひとつです。本記事では基礎知識に加え、原価償却資産の代表的な項目について例をあげわかりやすく解説します。

減価償却とは?

減価償却とは、時間の経過によって資産価値が減少していく固定資産に対し、購入した際の費用と耐用年数に応じて毎年費用計上していくという会計処理のことです。
処理方法としては、「定額法」と「定率法」があり、こちらは後述します。

なぜ減価償却が必要なのか

例えば、500万円の社用車を購入した場合、その年の利益が圧迫され赤字になったり利益が大幅に減ったりする可能性があります。
翌年は固定資産の支払いがないため、また黒字に戻る、というように本来の企業の損益状況が把握できなくなります。そのため、耐用年数に応じ毎年計上するという考え方です。

減価償却の計算方式|定額法と定率法

減価償却の方法は主に2通りあります。それが「定額法」と「定率法」です。
ここでは不動産を例に解説します。

<定額法>

定額法とは、購入にかかった費用を耐用年数で割ることで算出される金額を、毎年経費計上していきます。
例えば、耐用年数50年のオフィスビルを1億円で購入した場合、「1億÷50」で毎年減価償却出来る金額は200万円となります。
ちなみに、耐用年数は建物の種類により細かく分けられており最長で50年、最短で3年となっています。

定額法の計算式

減価償却費 = 取得原価 × 定額法の償却率

<定率法>

定率法とは、購入にかかった費用に対し、毎年一定に償却率をかけて算出される金額を毎年経費計上していく方法です。
定額法とは異なり、毎年減価償却額が減少していくという特徴があります。
耐用年数50年のものは償却率が0.042となり、1億円のオフィスビルだと以下のように償却していくことになります。

  • 1年目:100,000,000×0.042=4,200,000
  • 2年目:4,200,000×0.042=176,400←この金額は最低保証金額の1,440,000円を下回るので、2年目以降は毎年の償却額が1,440,000円となる。

減価償却の基礎知識ということで定額法と定率法について解説しましたが、マンションやビルといった建物は定額法での償却に一本化されています。
ちなみに、2015年の税制改正大網では、建物と一体的に整備される付属設備(エレベーターや電気・ガス設備など)についても定額法で一本化されることが決定しました。
2016年4月1日以降に購入した建物に関しては、この定額法一本化が適用されるので注意しましょう。

定率法の計算式

減価償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率

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減価償却の関連用語

減価償却を理解するうえで必要となる関連用語を解説します。

用語 意味
減価償却資産 減価償却の対象になる固定資産。

業務で使用するもののうち、時間の経過によって資産価値が減少していくものが対象になる。

法定耐用年数
(耐用年数)
減価償却対象の固定資産を通常の利用方法で使用していた場合に、正常に使い続けられる年数のこと。

課税の公平性を図るために国によって設けられた基準年数で「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」
で定められている。

減価償却費 減価償却資産の購入金額を法定耐用年数に則り各年の費用として配分し計上する際の勘定科目。
減価償却累計額 これまでに減価償却費として計上した費用の累計額を示す勘定科目。
取得価額 減価償却資産の購入に要した金額。

固定資産の購入金額に加え、荷役費、購入手数料など購入にあたり必要になった関連費用も取得原価に含まれる。

事業供用日 減価償却資産の使用開始日。

購入した日ではなく、実際使用を開始した日となるため、購入した機材などを設置しただけでは事業供用日として扱わず、事業に影響する形で使用を開始した日を採用する。

未償却残高 減価償却を行う際に、取得原価から各期の減価償却累計額を引いた残高。

未償却残高は1円までの償却が可能で、これは、耐用年数を終え、減価償却が終わっても、実務上で固定資産を使い続けることが多いため備忘価額として扱う。
備忘価額は、減価償却資産の廃棄や売却によりなくなる。

減価償却のメリットとデメリット

ここでは減価償却のメリットとデメリットについて解説します。

減価償却のメリット

<節税効果がある>

前述したように、減価償却とは購入した耐用年数に応じて費用を分散していくというものです。
一回で費用計上するわけではないので、毎年減価償却費が発生します。
これがどういうメリットに繋がるかというと、毎年の利益を減額計上できるので、法人税を抑えることにつながります。
つまり、当期利益が1,000万円で毎年の償却費が200万円だった場合、損益は800万円となります。
このため、200万円分法人税が抑えられるということです。

<正確な財務状況を維持できる>

例えば、1億円のオフィスビルを購入し、その費用を1年目で全て計上するとします。
その場合、その会社の利益は表面上大幅に減少、もしくは赤字計算になります。
しかし、翌年には購入費を計上する必要はないので、前年に比べて利益が大幅に増加します。
一見問題ないように見えますが、これは経営上多くの問題を発生させる原因にもなるので良くありません。
そういった意味で、減価償却は経営の合理性を保つ役割も果たしています。

<資金が残る>

減価償却2年目以降、経理上の利益は減りますが実際には支出が発生していないため、その分手元に現金が残ります。ただし減価償却費と同額の資金が必ず残るということではないことに注意が必要です。

減価償却のデメリット

<会計処理が面倒>

減価償却することで、税制上のデメリットなどは特にありません。
しかし、会計処理の面に関して言えば、手間がかかるのは否定できません。
「定額法なのだから、毎年一定の金額を費用計上するだけじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実際は違います。

確かに、毎年一定の金額を費用計上するには変わりありませんが、税制法などは頻繁に改定されるため、都度その改定に合わせなければなりません。
2015年の税制改正大網では定額法一本化という改定でしたが、もしかすると今後耐用年数の見直しが発生する可能性もあります。
そうなると、未償却分に対し新たな耐用年数に応じた償却額を算出しなければならず、多くのマンションやビルを抱えているリース会社や管理会社にとっては、大きな業務負担になる可能性があります。
そのため一見簡単そうに見える会計処理も、複雑な処理が必要となる場合があります。
これらが、減価償却のメリットとデメリットです。
最近では、システムに減価償却額の計算を任せている場合もあるので、以前よりデメリットが薄くなったと言えますが、改定に伴うアップデートなどが大変だと感じている企業は多いでしょう。

減価償却 定額法 定率法 即時償却

減価償却と併せて知っておきたい即時償却について

減価償却の基礎知識やメリットとデメリットについて解説したので、最後に即時償却についても触れておきたいと思います。
即時償却とは、その名の通り購入費用を即時に経費計上するという会計処理であり、減価償却とは反対の処理方法です。

2014年の税制改正大網では、「生産性向上設備投資促進税制」と言って、質の高い設備投資に対して、最大5%の税額控除または即時償却を可能にするという改定が話題を集めました。
この改定では、建物などにおいても、上限なしで即時償却が認められています。
では、即時償却にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

即時償却のメリット

<減価償却の面倒がなくなる>

減価償却のデメリットにおいて会計処理が手間になると説明しましたが、即時償却では初年度に購入費の全てを経費計上できるため、長期間に渡る会計処理の手間がなくなります。
一つ一つは小さなメリットかもしれませんが、全体で見れば大きな業務効率化に繋がることもあります。

<手元にお金を残せる>

即時償却のメリットは一回で経費計上することで、節税対策に繋がると考えている方が多いようですが、実は金銭的なメリットはそこまでありません。
なぜならば、即時償却でも減価償却でもトータルで考えれば、支払う税金がそこまで大差ないからです。

本当のメリットは「早い段階で手元に多くのお金を残せる」ということです。
つまり、減価償却で1年目に手元に残る金額より、即時償却で手元に残る金額の方が大きいのです。
手元にあるお金が多ければ多いほど、設備投資などに回すことができるので、経営上大きなメリットとなります。

即時償却のデメリット

<即時償却をするための条件がある>

実は即時償却の対象となるためには、2つの条件をクリアしなければなりません。

それが「工業会の証明」と「一定の投資利益率」です。
工業会の証明とは、建物や設備などが最新モデルや生産性の向上に繋がるものだという一定要件を満たしているかの証明です。
こちらは、メーカーを通じて証明を申請する必要があります。
そして、一定の投資利益率とは、投資計画における利益率が年5%以上であることです。
この2つの条件をクリアしていなければ、即時償却の対象となることはできません。

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減価償却できる資産、できない資産

固定資産には減価償却できる資産とできない資産があります。それぞれ解説します。

減価償却できる資産

使用可能期間が1年以上で取得価額が10万円以上のもので下記は減価償却の対象となります。

  • 有形固定資産:設備、建物、工場、工具、備品など
  • 無形固定資産:ソフトウェア、特許権、商標権など
  • 生物:樹木、家畜など

減価償却できない資産

時間経過で価値が減少しない資産、業務に使用していない資産は減価償却の対象になりません。

  • 建設中の資産:使用を開始してから対象となる
  • たな卸し資産:在庫全般は販売した際に売上原価として計上する
  • 美術品、骨董品、土地や借用権:景気の変動で価値変動はあるが、時間経過で減少しない
  • 稼働休止中の資産:稼働が休止している=業務に使用していない資産として扱われる

「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」とは

減価償却資産の耐用年数等に関する省令は、固定資産が本来の用途で使用できる年数「耐用年数」について国によって設けられた基準で、減価償却を行う際、何年で償却するのか知るため必ず確認が必要なものです。
減価償却資産の耐用年数等に関する省令では、耐用年数と、減価償却率が定められています。

  • 耐用年数
    耐用年数は固定資産ごとに異なります。各資産の耐用年数が不明な場合は、管轄の税務署に確認すると良いでしょう。
  • 耐用年数ごとの減価償却率
    定率法で償却を行う場合は、政令で定められた償却率を使用し計上します。
    購入年によって償却率が異なるため注意が必要です。

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不動産、車、ソフトウェアの減価償却例

ここでは企業でよく使われる固定資産の概要や注意点などを解説します。

不動産

不動産は木造や鉄骨、鉄骨の厚さ、鉄筋コンクリート造などの建物構造や事業用不動産か、非事業用不動産かによって、耐用年数と償却率が異なります。
事業用不動産とは貸付要の賃貸物件や店舗、事務所などを指し、月単位で処理しますが、居住用の建物である非事業用不動産は「経過年数」と呼ばれる年単位で計算します。

耐用年数

不動産の耐用年数は「別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」を参照します。

注意点

・土地と建物を分けて処理する
建物は減価償却できますが、土地は減価償却ができない資産です。そのため、一括契約した場合でも土地と建物は分けて処理する必要があります。

通常、法人は定率法で処理を行い、個人事業主は定額法で処理することが定められています。定率法、定額法、どちらの計算方法でも残存価額が備忘価額の1円になるまで減価償却していきます。

耐用年数

車の耐用年数は「別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」の「運送事業用、貸自動車業用又は自動車教習所用の車両及び運搬具」を参照します。

注意点

・購入タイミング
車の購入タイミングは、決算月の翌月に合わせると良いでしょう。減価償却は月割で行うため、決算直前に購入した場合償却対象期間が短くなりますが決算月の翌月に購入すると、より多く経費として処理することができます。

ソフトウェア

ソフトウェアは、自社利用目的のソフトウェア、市場販売目的のソフトウェア、受注制作販売目的のソフトウェアの大きく3つに分類されます。受注制作販売目的のソフトウェア以外は減価償却が可能です。
ソフトウェアは定額法で処理を行いますが、目的によって償却期間が3年と5年に分かれます。

耐用年数

ソフトウェアの耐用年数は「別表第三 無形減価償却資産の耐用年数表」参照します。

注意点

・会計上と税務上の償却額
市場販売目的のソフトウェアは償却期間が3年ですが、税務上のソフトウェアの耐用年数は5年の為、会計上と税務上の償却額が変わる可能性があります。

まとめ

今回は減価償却の基礎知識、メリットとデメリット、即時償却、計算時の注意点について紹介しました。
減価償却も即時償却も複雑な制度であるため混乱するかもしれませんが、不動産業界のみならず、全てのビジネスパーソンが頭に入れておきたい知識の一つです。

個人的にアパートやマンションで家賃収入を得るために購入した場合にもの適用されるものなので、「経理や経営者が知っておくもの」と理解しておくと良いでしょう。

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