プロジェクトマネージャー必見!SIerの原価計算の考え方

SIer 原価計算 プロジェクトマネージャ

原価計算には標準原価計算、実際原価計算、直接原価計算等さまざまな種類の計算があります。今回は、その他の業界と比較しつつ、SIer(システムインテグレーター)に特化した原価計算の手法や考え方に焦点を当てて解説していきます。

いわゆる個別原価計算という手法で、同じ種類の製品を見込みで大量に生産するのではなく、仕様の異なる製品の生産管理をする際に用いられる計算方法です。つまり、SI(システムインテグレーション)のようにプロジェクト毎に製品を納品するビジネスに用いられる手法について紹介します。

1.原価計算とは

まず、原価とは簡単に要約すると、製品(商品)を作るのにかかるコストのことです。
例えば、ハンバーガーを一個作るには、ハンバーグやパン等の材料費、従業員に支払う給料・賞与等の労務費、水光熱費や製造機械等の減価償却費、賃借料等の経費がかかります。 これらをまとめて計算したものが原価となります。

この原価=製造コストが、商品価格より高くなってしまうと、企業としての利益が出ないので、適切な管理を行う必要があります。
そのために行う計算が原価計算であり、企業の浮沈を左右する重要なフェーズです。

2.原価計算を行う目的

原価計算 目的 予算

原価計算を行う目的には大きく分けて次の5つがあります。
1.「予算を作成・管理」、2.「原価管理」、3.「価格(販売価格)の決定」、4.「財務諸表作成」、5.「経営の意志決定」です。
いずれのケースをとっても最終的なゴールは、経営管理や経営分析を行うことによって、経営改善を進めていくことです。

「売上-原価=利益」という式が成り立つことと、この式の重要性は誰もが納得するところでしょう。この式からわかることは、利益を上げるためには、「売上を伸ばす」か「原価を下げる」の2つの方法があるということです。

売上は顧客との兼ね合いもあるので一筋縄にはいかない面もありますが、原価を下げるという点に関しては、自分たちの努力次第で改善できる部分も多いので、原価管理活動に多くの時間を割く企業も少なくないでしょう。

こうした活動はITプロジェクトにおいても重要で、プロジェクトメンバーの人件費、協力会社に委託する外注費、経費といった直接費をできるだけ抑えることが求められます。
また、開発メンバーの研修時間などの間接労務費や、オフィス賃料・水道光熱費といった共通費などの、いわゆる間接費も抑えることが望ましいですが、直接費に比べれば劇的な改善は難しいと言えるでしょう。
家賃・水道光熱費・リース料・金利といった間接費は固定費か固定費的なものであり、下げようにも対策を講じることが難しいためです。

また、直接費や間接費の他に、販売費および一般管理費もかかりますので、トータルで考えた原価管理が必要となります。

経営陣にとっては1年先の短期的な計画だけでなく、3年・5年といったスパンでの中長期計画が必要となってきます。そういった場合に備えて、常時適正な原価計算や原価管理を行っておくことが重要です。

とりわけSIerの場合は人がそのまま原価として計算され、原価率に占める割合が高いです。そのため、中長期計画を立てる際にも、どういったスキルの人物を何人採用するかといった判断材料に、原価計算で得られた情報を利用することがポイントです。

3.個別原価計算とは

IT業界では、製品を生産する際に定形の仕様があるわけではなく、プロジェクトごとに仕様を設計して開発していきます。そしてプロジェクトごとにかかったコストを集計します。
パッケージやエクセル等を用いてデータ集計を行い、「どのプロジェクトにどれだけの時間をかけたか」といった工数報告をしているSIerも多いのではないでしょうか。

そういった報告に基づいて経理部門はプロジェクトごとの労務費を集計していきます。 そして集計された製品コストは、売上に応じて売上原価(費用)に移動させます。
こうして、プロジェクトごとに集計していく方法を「個別原価計算」と言います。
一つの製品が完成するまでにかかった費用が原価となるのが個別原価計算の特徴です。

ITプロジェクトの原価計算のステップを見ていくと、「費目別計算→部門別計算→プロジェクト別計算」という段階を踏みます。

費目別計算では、一定期間内に部門で発生した原価要素を労務費、外注費、経費などの費目別に分類して計算します。

続いて部門別計算では、原価要素を原価部門別に分類して計算します。前述の費目別計算で間接費に分類された原価は、個別の原価部門に固有のものなのか、それとも全ての原価部門に共通する費用なのかによって計算方法が変わってきます。
固有の原価であれば、特定の原価部門(労務費・外注費等)に分類すれば良いですが、後者の原価部門ごとの共通費であれば、一定の基準ルールに基づいて各部門に配賦する必要があります。
部門共通費には、建物の減価償却費、火災保険礼固定資産税、不動産貸借料、厚生費等が含まれます。

こうした費目別計算・部門別計算の段階を経て、プロジェクト別計算に推移します。プロジェクトに直接かかる原価はそのまま集計し、間接費に関しては一定の基準によって各プロジェクトに配賦されることになります。

個別原価計算ではプロジェクトごとに原価を集計していくので、各プロジェクトの勝敗がわかりやすいという利点があります。
経営的に上手くいったプロジェクトは引き続き継続し、上手くいかなかった場合には、その原因の詳細分析を的確に行うことで、次のプロジェクトに活かすことができます。

参考:総合原価計算について

個別原価計算 総合原価計算

一つの製品が完成するまでにかかった費用が原価となったのが個別原価計算の考え方であるのに対して、総合原価計算は、同じ種類の製品を大量に製造する場合に用いられる計算手法です。

例えば大手菓子メーカーでポップコーンを大量に製造している場合、何年にも渡って生産し続けるので(売れなければ別ですが)、ポップコーン1袋に対するコストを算出するのは難しく、ポップコーン製造全体にかかったコストを一定期間で区切って算出していくことになります。

同じ種類の製品全体のコストを集計し、按分計算を行うことで製品1つあたりの原価を算出する方法が総合原価計算です。

■個別原価計算に適した業種・・・システム開発、建設業、など
■総合原価計算に適した業種・・・食品、自動車、など

まとめ

SIerに必要な個別原価計算について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

原価計算の目的は、自社のビジネスに適した計算方法を用いることで、適切な原価管理を行い、企業としての業績を高めていくことです。 企業経営を行っていく上では、売上を伸ばすより原価を下げる方が取り掛かりやすいという側面もありますので、組織内での地道な努力が利益を上げることにつながっていきます。

多くの企業で原価管理は行われていると思いますが、改めてその方法や管理手法を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

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