なぜリスクマネジメントが重要なのか!?プロジェクトの出来を左右するリスク対策!

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有能なプロジェクトマネージャーは、プロジェクトの初期段階からリスクを評価します。
プロジェクトの成功を少しでも脅かす事象があるとすれば、プロジェクト開始前にそれらを全て洗い出しておくことが大切です。
リスクと各種制約条件を分析する目的は、予算やスケジュール、政治、経済、法律、組織構造などのプロジェクトを限定する諸要因があった場合でも、プロジェクトが実行可能であるということを示すためです。

これらを考慮せずにプロジェクトを開始すると、さまざまな要因によってプロジェクトは失敗の道をたどります。
サプライヤーの納期遅れや倒産、経営陣のもめごと、ストライキ等の外的要因によって、進捗遅れやプロジェクト自体が取りやめになるといったケースもあります。
そういった最悪の事態を避けるためにも、いかにリスク対策を行っていけば良いのか、そのポイントについてご紹介します。

リスクについて知る

リスクマネジメントを行うには、プロジェクトを進行するにあたってどのようなリスクがあるのか知っておく必要があります。
リスクの領域に関しては、主に以下の6つに分けることができます。

    6つのリスク領域とは、

  • スケジュール
  • 予算
  • メンバー
  • 外的要因
  • 社内政治
  • ステークホルダー

上位3つの、「スケジュール」、「予算」、「メンバー」に関しては比較的理解しやすいリスクだと考えられます。
この3点はプロジェクトといった括りに限らず、ビジネスを行っていく上で常に頭に入れておく必要がある領域です。
改めて確認すると、スケジュールに関しては、当初計画よりも長い時間がかかり、時間切れや納期遅れのリスクが発生するケースを言います。
予算は文字通り、必要資金を確保できないケースのことです。
メンバーのリスクとは、プロジェクトが開始しているにも関わらず、必要なスキル・経験を持つメンバーを確保できていない状況を指します。

続いて「外的要因」とは、社内やプロジェクトチームがコントロールできない要因を指します。
例えば、行政当局による規制強化や技術変化などのケースへの対応です。

「社内政治」の問題では、社内で競争関係や対立関係にあるグループや組織が共同で作業の責任を負うことになった際に、双方のやり取りが上手くいかずにプロジェクトが思うように進まないリスクを指します。

最後の「ステークホルダー」のリスクについては、ステークホルダーに時間的・経済的余裕がない場合などに、満足のいく支援を受けることができずに、プロジェクトが進展しても顧客満足を満たすことができない恐れがあるケースを指します。

上記のリスクの他にも、下記のようなビジネスリスクも考慮しておく必要があります。

ビジネスリスク
需要 購入したい顧客がいるかどうか
コスト 提供価格が高くならないか
時間 市場が求めているタイミングで納品できるか
保守対応 納品した製品の保守を担当できる人間がいるか
政治的支援 スポンサー交代時に新任スポンサーからの支援を受けられるか

こういったさまざまなリスクがあることを知り、具体的な対策を立てていくことが大切になります。

RBSを策定して、リスクマネジメントを行う

リスク分析を行う方法の一つとして、リスク・ブレークダウン・ストラクチャー (RBS) を策定することが挙げられます。
RBSでは、リスクを階層化し、体系的に表現します。
そうすることで、リスクを領域と原因の観点から分析することができるようになります。
リスクを特定することは大切ですが、特定したリスクに対して、その発生確率を下げ、影響度を抑える対策を講じることがより重要になってきます。

具体的には以下のような対策が挙げられます。

  • 計画策定の早い段階で、問題になりそうな事柄について、チーム内でブレストなどの協議を行い、経営陣に提言する。
  • リスクの原因を除去し、問題を回避する。例えば、プロジェクトの途中で主要メンバーが抜ける可能性がある場合、他の適任者をあらかじめスタンバイさせておく等の対策を講じる。
  • リスクを受け入れる。リスク自体は発生するものとして頭に入れておき、実際に発生した場合に対策を考える。発生確率が比較的低いと考えられるものに効果がある。

リスク対策を行うにあたっては、リスク許容度を協議しておくことが大切です。
全てのリスクに対して、同レベルの意識付けと対策を取ることは効率的ではないので、あらかじめリスク許容度が低いものと、そうではないものに分けて考えておく必要があります。

例えば、競合他社より先に製品をリリースしたい場合は、スケジュールに関してのリスクには許容度が低くなるでしょう。
つまり、スケジュール遅延が発生しそうな場合には、どんな手を打ってでもそのリスクを回避する必要があります。

一方でこの場合、経済的な予算に関しては許容度を高くする必要があります。
スケジュール遅延が発生しそうな場合には、一般的に人員を増やすなどといった対策を講じますが、その際の人件費等は多少かさんでもやむなしと考えておくべきでしょう。

このように、リスクに対して優先度をつけ、チーム内で方向性を共有しておくことで、実際にリスクが顕在化した際に、スピーディーな意思決定をできるようにしておくことが大切です。

リスクを軽減するために抑えておくべき4つのポイント

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ここでは、実際にリスクが発生、または発生する可能性が極めて高い場合の対策についてご紹介します。
前段までで紹介してきた、リスクマネジメントができていることを前提として話を進めていきます。

1.リスクを受容する

リスク計画作成時点では何の手も打たずに静観し、リスクが実際に発生したらその時点で対応します。
リスクを除去・軽減するよりも、その影響を引き受ける方がコスト面で負担にならないケースで有効な方針です。

2.リスクを回避する

リスクがある部分をプロジェクトから削除することや、プロジェクト自体をさらに小さなプロジェクトに分割することで、プロジェクト全体としてのリスクを軽減する手法のことです。
リスクを回避することで、ビジネス自体が変わってしまう可能性もあることを頭に入れておくべきでしょう。
場合によっては、大きな見返りを求めて回避したかに思えたリスクに変わって、新たなリスクが発生することもあるので注意が必要です。

3.リスク発生に備えて発生時対策(コンティンジェンシー・プラン)を策定する

コンティンジェンシー・プランとは「緊急時対応計画」のことで、事業の遂行を妨げる事象を列挙し、それぞれについて想定される事態や損害の大きさを見積もって、各人員や組織の行動計画などを定めたものです。
損害を軽減するために事前の対策が含まれることもあります。
BCP(事業継続計画)に似た概念ですが、BCPが事象発生後の事業継続や復旧に力点が置かれているのに対して、コンティンジェンシー・プランは事象発生直後に被害を最小限に抑えるための緊急対応・初動計画という意味合いが強いです。
物事が起きる前に先取りして対策を練っておくことで、実際に事象が発生した時にそれに反応して手を打つよりも、効果的・効率的だという考えに基づいています。

4.リスクを移転する

リスク移転のもっともわかりやすい例は、保険をかけることです。
保険をかければ、窃盗や火災、水害などのリスクを保険会社へ移転することができます。
プロジェクトでも同様に、外部の資源を利用して、プロジェクトの一部を担ってもらうという手もあります。
例えば、サプライヤーと固定価格契約を結ぶことで、コスト増大のリスクをサプライヤーに移転することができます。

以上の4つのポイントを重点的に見直し、リスク対策を行っていくことが重要です。
リスクマネジメントは継続するプロセスであり、一度策定したからといって終わりはありません。
定期的に見直しを図り、その時点の状況に応じて最善の対策を練っておくことが大切です。
プロジェクトでは想定外の問題に遭遇し、何らかの対策が必要となることが少なくありません。

問題の種類や規模に応じて、解決に必要な資源の種類も異なってきます。
一つ一つの事象に対して、適切な対応策を講じることで、リスクを一つずつ確実に潰していくことが重要です。
リスク緩和策に伴うコストとリスク発生の確率・影響度の間には、常にバランスを保っておく必要があります。
リスク対策が十分でも、大幅なコスト増となっては利益が出ないので、その辺りのさじ加減はプロジェクトマネージャーの腕の見せ所と言えます。

まとめ

今一度“リスクマネジメント”というワードの理解を深めて頂くために、“危機管理”との対比で説明します。
まずRiskとCrisis(危機)の違いになりますが、Crisis(危機)というのは、主に既に発生した事態のことを指します。
それに対して、Riskは未だに発生していない危険な状態を指します。

ここから“危機管理”と“リスクマネジメント”の違いが見えてくるでしょう。
つまり、危機管理とは、既に発生した事件や事故に対して、その被害を最小限に食い止めるための対策を講じることを言います。
災害や事故直後に設置される「危機管理室」や「危機管理体制」などというワードを聞けば、理解が早いでしょう。

それに対して、リスクマネジメントとは、今後起こりうる事象に対して、事前に対応しておこうとする行動のことを指します。
つまりリスクマネジメントとは、常に前向きで未来に向けた能動的な動きということになります。
実際には発生していない事象に対して対策を講じることになるので、難しい点は多々ありますが、「未来への投資」と考えることで、その重要性を認識して行動していくことが大切です。

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