働き方改革待ったなし!労働基準法の改正で残業時間の上限や有給取得はどう変わるのか

2019年4月から働き方改革関連法案が施行され、残業規制をはじめとして、企業は大きな影響を受けることが予測されます。
一方で、日本商工会議所が2018年に実施したアンケート調査によると、中小企業の約39%が働き方改革関連法案による残業規制の内容について知らないと回答したそうです。

このままでは、知らず知らずのうちに法令違反となってしまう企業も少なくはないでしょう。残された時間はわずかしかありません。今回は多くの企業と関係が深い、残業規制を中心に新しい法令の内容と企業の対策ポイントについて解説します。

(出典:「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」集計結果|日本商工会議所)

 

1.働き方改革法案のポイント〜残業時間や有給休暇はどうなるのか〜

まず、働き方改革法案の内容についてポイントをみていきましょう。

1-1.残業時間について上限規制

今まで企業は従業員と36協定を締結すれば、規定の労働時間を超えて残業することができました。ほんの10年前には残業時間が100時間を越える企業も珍しくはなかったのではないでしょうか。

今回の法改正では残業時間に上限規制ができました。これは以前のように36協定を締結しても回避することはできません。具体的には月に原則45時間、多い月でも残業時間は100時間を越えることができなくなります。残業規制について、大手企業は2019年4月から法律の施行が決定しており、昨年度から対策が進められています。中小企業は1年遅れて、2020年からの施行ですが、時間は多く残されていません。今すぐに対策を検討する必要があるでしょう。

<残業時間の上限規制>

  • 時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、 臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
  • 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも以下とする必要があります。
    • 時間外労働 ・・・年720時間以内
    • 時間外労働+休日労働 ・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内
  • 原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までです。
  • 法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断 されます。
  • 大企業への施行は2019年4月ですが、中小企業への適用は1年猶予され2020年 4月となります。

(出典:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)

1-2.客観的な勤務時間の把握が義務化

残業規制が設けられる一方で、労働時間を客観的に把握することも義務化されます。

客観的とはどういうことでしょうか。法令では具体的な手法にまでは触れられていません。

一つの基準としては、厚生労働省が2018年1月20日に発行した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」があります。このガイドラインには使用者が実地で確認するか、カードリーダーなどの電子的手法で勤務時間を把握することを求めています。ある程度社員のいる企業において、勤務時間を実地で確認することは困難です。
多くは電子的な手法を導入することが必要となるでしょう。

1-3.有給休暇取得が義務化

残業時間が規制されるだけではなく、有給休暇の取得も義務化されます。今までは有給休暇をほとんど使わない人もいたでしょう。2019年4月からは年間10日以上の有給休暇が与えられる従業員は年間5日間の有給暇取得が義務化されます。これは企業規模に関わらず2019年4月から施行されるため、中小企業も対策が必要です。
有給休暇の取得率が極めて低い場合は、一斉に休暇する日を定めるといったことも考えていく必要があるでしょう。

 

2.法令違反のリスク

残業時間の上限規制を越えた場合、罰則規定も用意されています。残業時間の上限規制を越えたことが発覚した場合、6ヶ月以下の懲役、あるいは、30万円以下の罰金を支払うことになります。

また、違法な長時間残業は現在も社名公開が行われており、社会的信用が失墜する恐れもあります。働き手が不足し、売り手市場であると言われるなか、このような法令違反での社名公開は採用に大きな影響を与えるでしょう。

 

3.働き方改革による残業削減の進め方

それでは実際にどのように残業削減に取り組めばよいのでしょうか。ここでは6つの取り組み例をご紹介します。

3-1.まずは勤務時間正確な把握が第一

法令でも義務化されることになりますが、まずは労働時間を正確に把握するところから初めましょう。正確な労働時間の把握ができなければ、法令を遵守することもできません。
また、従業員の勤務時間は、日々マネジメントをする管理職と共有することも重要です。現場レベルで、管理職が部下の残業時間を把握し、必要に応じて早く帰るように指示をする、業務の配分を見直すといった対策をとらなければ、残業時間の上限規制を遵守することは難しいでしょう。

3-2.現場の理解が必要!残業削減の意識を高めよう

最後まで仕事をやりきろうとして、一人で仕事を抱えこんでしまう人が多くの職場に一人はいるのではないでしょうか。まじめな人ほど責任感の強さゆえに長時間残業してしまうことがあります。
一人一人が今回の法改正の内容を把握し、残業時間の規制を破った場合のリスクを理解する必要があるでしょう。そのためには、従業員に対して通知をする、説明会を開催するといったことも検討するとよいでしょう。

3-3.作業の棚卸、無駄な作業はやめる

残業時間を削減するために仕事を効率化するといっても限界があります。
日頃の仕事を棚卸して、止めることができる仕事はないかを確認しましょう。改めて仕事を見直すと目的が不明確な仕事や重複している仕事があるものです。続けている仕事を止めるのは勇気がいるかもしれませんが、思いきってやめるという選択肢も検討してみましょう。

3-4.技術の活用を検討する

仕事を減らすことができない、人手が不足しているといった場合は新しい技術の採用を検討するという手段もあります。
最近注目を集めている技術にRPAやチャットボットがあります。これは今までシステム化されていなかった事務作業まで自動化しようというものです。例えば、ソフトバンクではヘルプデスクにチャットボットを導入することで、平均対応時間が15%も効率化したといいます。また、NECマネジメントパートナーではRPAとよばれるソフトウェアのロボットが人の代わりに多くの業務を担っています。
ただし、このような技術の活用は導入時に一時的に業務負荷が増えたり、全ての業務に適用できるわけではなかったりすることに注意が必要です。

3-5.残業削減に向けたインセンティブを考える

人によっては残業時間が生活費のなかである程度の割合を占めていることがあります。また、そうでなくとも残業時間の抑制により収入がへり、モチベーションが下がる従業員もいるでしょう。このような状況では、なかなか残業時間削減にむけた取り組みは進みません。
残業時間の削減で収入が減少する従業員の不満を解消するためには、残業時間削減の成果を従業員に還元することも一つの方法です。例えば、SCSKというIT企業は残業時間削減にインセンティブを導入し、長期間労働撲滅に成功しています。

 

4.法令違反やセキュリティ事故のリスクに注意

仕事量も対応人数も増えないまま残業時間の削減に取り組むと、仕事を家に持ち帰ってしまったり、勤務時間をごまかしてしまったりという問題が発生する危険性があります。これでは逆に、法令違反やセキュリティ事故につながる可能性が高まることになるでしょう。残業時間を減らす場合は、仕事を効率化や削減を平行して行うとともに、勝手に仕事を持ち帰ったり、勤務時間をごまかしたりしないようにマネジメントに気をつける必要があります。

 

5.まとめ

今回は働き方改革関連法案の目玉でもある残業規制を中心に解説しました。

大手企業は2019年4月から働き方改革関連法案による残業規制が施行されます。中小企業は1年後の2020年から施行されますが、いずれにせよ残された時間はわずかです。法令を遵守するためには、まず、自社の状況を把握したうえで、残業削減に向けた取り組みを進める必要があるでしょう。また、法令を遵守するために重要となるのは管理職のマネジメントです。
自身はもちろん、部下が働き過ぎないように目を光らせる必要があります。各自の勤務時間を把握して時には法令違反がでないように早く帰宅するように指示する、業務分担の見直しを行う、一時的に配置転換を行うといった判断も必要になってくるでしょう。

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