【働き方改革成功事例付き】現状を分析して自社に適した働き方改革を進めよう!

長時間働いている人の評価が高く、「帰りづらい」「休みづらい」といった雰囲気が職場内で蔓延している企業は少なくありません。その結果、ストレスや疲れがたまり生産性も悪化してしまいます。

政府は政策の柱として働き方改革を掲げ、その取り組みを提唱しています。企業でも画期的な働き方改革の取り組みを進めています。しかし、働き方改革という言葉だけが一人歩きしており、具体的な取り組みに踏み切るのは一筋縄ではいきません。

 

  • 働き方改革の本質がわからない
  • 自社に適した働き方改革の取り組みがわからない
  • 働き方改革の取り組みをどのように進めればいいかわからない

といったお悩みを抱えてはいないでしょうか?

本記事では、そんなお悩みを解決するために、働き方改革の概要をはじめ、自社に適した働き方改革を実行する方法を解説します。自社の取り組みの参考となるよう他社の成功事例も取り上げます。

自社の労働環境を変えるために働き方改革を実行する際にぜひご活用ください。

1.働き方改革の基礎知識

働き方改革とは一体何なのか?働き方改革が生まれた背景や取り組みを通して実現したいこと、実現にあたっての課題を把握し、働き方改革を理解しましょう。

1-1.働き方改革とは

働き方改革とは、働く人の視点に立って労働制度の抜本改革を行い、企業文化や働き方を変えようとする取り組みです。2016年に安倍内閣が一億総活躍社会の実現のための最大のチャレンジとして位置づけました。

政府は働き方改革を労働生産性を改善する手段として考えています。生産性が向上した成果を働く人に分配することで賃金が上昇し、需要の拡大を通した成長のループを描こうとしています。

1-2.働き方改革の背景

働き方改革が生まれた背景には、労働力人口の減少や長時間労働、労働生産性が低いという問題があります。

<労働力人口の減少>

日本の労働力人口は減少の一途を辿っています。労働力人口とは労働に適する15歳以上の人口のうち、収入を伴う仕事に従事した就業者と求職中であった完全失業者の合計を指します。

労働力人口は2016年には6,673万人でしたが、2030年には6,362万人になる見通しで、300万人を超える減少が予想されています。

急激な労働力人口の減少により、人材不足や経済成長への影響が懸念されています。

出典:厚生労働省 平成29年版厚生労働白書
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17-2/dl/01.pdf

<長時間労働>

日本は欧州諸国と比較して労働時間が長く、長時間労働による過労死や自殺が問題になっています。労働基準法では、原則として労働時間の上限を1日8時間、週40時間と決めています。しかし、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)に特別条項を付与することで、時間外の上限に関係なく労働時間を延長することができてしまいます。

<低い労働生産性>

労働生産性とは、生み出された生産額を投下した労働の量で割った値です。つまり、労働者一人当たりの生産額を表します。

主要先進35カ国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟諸国と比較すると日本は35カ国中18位となっています。これはアメリカの2/3の水準にあたり、OECD加盟国の平均を下回ります。

出典:公益財団法人 日本生産性本部
http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2016R2.pdf

1-3.働き方改革の対策

働き方改革の背景にある問題に対し、政府は働き手増加や出生率の上昇、生産性向上に向けた対策を検討しています。

<働き手増加>

労働力が減っている今、市場に参加していない働き手を増やす必要があります。働けない理由としては子育てや介護との両立が困難、転職者に厳しい採用環境、定年を迎え働き口がないといったことが挙げられます。

政府としては、子育てや介護を理由に仕事を辞めずに済むよう、保育士や介護人材の確保に向けて処遇改善対策を行なっています。外国人材の受け入れも検討しており、高度な外国人材以外の受け入れについても議論が進められています。

<出生率上昇>

結婚率の低下や晩婚化が進み、出生率が減少しています。経済的な負担や育児環境が整っていないといった問題が絡み合っています。

政府では、柔軟な働き方がしやすい環境整備を進めており、テレワークといった雇用契約によらない働き方のガイドラインを整えています。また、育児休業の取得状況の見える化を検討し、企業の労働環境の透明性を図ろうとしています。

<生産性向上>

長時間労働によるストレスや疲れは、生産性の低下につながります。正規労働者や非正規労働者の不合理な待遇差もモチベーションを下げ、生産性を悪化させる原因となっています。

政府は、長時間労働を是正するために時間外労働の上限について規制を検討しています。罰則による強制力を持たせるとともに、労使が合意した場合であっても超えることのできない上限を設定することで労働時間を削減しようとしています。

 

2.働き方改革の前にやるべきこと

働き方改革の背景や政府の提唱する取り組みを解説してきました。働き方改革の概要を理解していただけたと思いますが、自社では具体的に何をすればいいのでしょうか?働き方改革の取り組みを自社で行うためにやるべきことを解説します。

2-1.現状把握

働き方改革の取り組みは多岐にわたっているため、どれから手をつければいいか混乱してしまいます。自社に適した取り組みを始めるためには、まず自社の現状を把握しましょう。

自社の労働環境を把握するには、就業規則や勤怠データから社員の労働時間を確認します。長時間労働を強いる規則になっていないか、子育てと両立できる柔軟な働き方ができるのかを調査します。就業規則に問題がない場合でも規則に違反して長時間労働をしている社員がいる可能性があるので、細かくチェックしていきましょう。

厚生労働省が提供する「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、自社の労働環境を診断できます。簡単な設問に答えるだけで現状を見える化できるので、現状を把握するために積極的に活用しましょう。

働き方・休み方改善ポータルサイト
http://work-holiday.mhlw.go.jp/

2-2.問題点の洗い出し

自社の現状を把握できたら、労働環境の問題点を探っていきましょう。現状把握では、就業規則や労働時間を確認しています。法律に照らし、現在の状況が適切なものか判断します。

現状把握で紹介した「働き方・休み方改善ポータルサイト」でも問題点の分析が可能です。設問に答えた結果は下図のようにポジションマップとレーダーチャートとして可視化されます。企業における有給取得率といった指標の平均値と目標値が設定されているため、現状と比較して自社の労働環境の立ち位置がわかります。

2-3.解決策検討

自社の労働環境の問題点が明確になったら、個々の問題に対して解決策を検討していきましょう。問題の原因を突き止め、解決するためのルールづくりやツールの導入を検討します。

解決策の検討にあたり、もっとも重要なのが経営層や社員の理解を得ることです。問題を解決したとしても、働く人の意識を変えなければまた新たな問題を言い訳にして改善につながりません。社内説明会などを通して、周知を徹底していきましょう。

 

3.働き方改革成功事例

働き方改革について、自社に適した取り組みの見つけ方や進め方について解説してきました。自社の問題がわかり、具体的な取り組みをスタートする際に参考となる企業の事例を課題別に紹介します。

3-1.長時間労働の削減

システム開発からインフラ構築、マネジメントといったITサービスをフルラインナップで提供するSCSK株式会社では、2013年4月からスマートワーク・チャレンジという取り組みを行っています。この取り組みでは、有給休暇20日取得、平均月間残業20時間未満を目指しています。

スマートワーク・チャレンジでは、残業削減を進める上で障壁となっていた残業手当の減少を目標達成時のインセンティブとして支給しました。2015年7月からはこのインセンティブ制度を廃止し、残業時間の有無に関わらず、34時間または20時間の残業手当相当額を従来の所定月額給与に一律で上乗せ支給しています。

残業手当の減少を気にすることなく、より効率的な働き方を追求した結果、2012年度には約26時間あった平均月間残業時間が2015年度には18時間に減少させることに成功しています。

参考:SCSK株式会社 当社の「働き方改革」
https://www.scsk.jp/corp/csr/labor/worthwhile.html

3-2.同一賃金同一労働

家具小売世界最大手イケアの日本法人イケアジャパン株式会社では、「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンを掲げています。お客様はもちろんのこと、従業員に対しても同様の考えを持ち、最高の職場を目指しています。

ビジョンを実現するために2014年9月から有期雇用を廃止し、給与形態の見直しや統一した福利厚生を付与する新人事制度を導入しました。

従来の正社員とパートタイマーという考え方をなくし、全員をコワーカーとして位置づけています。そのため、同じ職務であれば同じ賃金を支給する職務給を適用し、同一賃金同一労働を実現しています。労働時間も①週39時間(フルタイム)、②週25時間~38時間、③週12~24時間の3区分に分かれており、ライフステージに合わせた働き方を選択できます。

給与水準が大幅に上がり、有期契約から無期契約に変わったことにより、長期のキャリアやライフプランを考えるコワーカーが増加する結果につながりました。

福利厚生も統一されているので、育児や介護との両立も可能になり、働きやすい環境が整備されました。

参考:厚生労働省 多様な人材活用で輝く企業応援サイト
http://tayou-jinkatsu.mhlw.go.jp/cases/case_18/

3-3.高齢者就労

エアコンを中心とした空調や化学、油圧機器事業を展開するダイキン工業株式会社では、「人を基軸に置いた経営」の実践を貫いています。企業競争力の源泉は人であるとし、多様な個性を組織の力とするチームワークを重視しています。

ダイキン工業では、定年を60歳としていますが、65歳までは希望者全員を再雇用する制度を導入しています。体力面の衰えや介護といった個人の事情を勘案し、4つの勤務形態を用意しています。

  1. フル勤務(1日7.75時間)
  2. 短時間勤務(1日6.5時間)
  3. 隔日勤務(2週間に5日勤務、1日7.75時間)
  4. 登録型(希望業務がある時だけ必要に応じて勤務)

再雇用率も80%を超えており、高い水準を維持しています。65歳を超えた場合であっても、熟練者やノウハウ、人脈をもった余人に変えがたい人材には引き続き働ける制度も用意されています。

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ダイキン工業における高齢者雇用の取り組み
http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20140925/houkoku/02_jirei1.html

 

4.まとめ

働き方改革は、現状の労働制度を働く人の視点に立って改革し、従来の企業文化や働き方を変える取り組みです。

自社に適した働き方改革を行うには、まず現状を把握し問題を洗い出す必要があります。目指すべき理想の労働環境に照らして、問題点の解決策を検討しましょう。

他社の先行事例も多く公開されています。事例を参考に自社の働き方改革の取り組みを具体化していきましょう。

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