IT企業での原価管理とは?重要性を理解し、原価低減に繋げよう  

大手シンクタンクのレポートによると、2018年8月時点での国内景気は、緩やかに回復傾向にあります。一方で、世界情勢の影響で輸出が横ばいで推移していること、コスト増加で収益が圧迫されていることにより、企業の景況感の改善は一服していると言われています。

人手不足により、人件費などのコストが増加傾向にある中、原価管理は企業の業績改善のために必要不可欠です。この記事では、IT企業の原価管理の基礎知識を解説します。

 

 

1.原価管理はなぜ重要なのか?

1-1.原価管理とは

原価とは、1つの製品にかかる生産コストを指します。そして、利益(売上総利益)は、売価から原価を差し引いたものとなります。そのため、原価を適切に管理することは、売値の設定や利益の改善に重要な役割を持ちます。

原価管理の方法は企業によって様々ですが、一般的には以下の3つのステップで行われます。

<目標原価を設定する(原価企画)>

製品の企画の時点で、目標とする原価を設定します。目標原価の設定は、既存製品の原価を元にコストを積み上げる積上法、市場状況から先に売価と利益目標を設定し、それらから導き出す割付法と、その両方を用いる統合法の主に3つの方法があります。

<目標原価と実質原価の差を確認・分析する(原価統制、原価維持)>

実際の原価を計算し、目標原価との差の確認と分析を行います。実質原価が目標原価を上回る場合には、目標原価に近づけることが必要となります。

<原価を引き下げる(原価低減)>

目標原価に無駄がある場合など、目標原価を下げて新しく設定し直します。原価統制、原価低減における原価の引き下げは、仕入先の変更、部品や製造の工程の標準化などによって行います。

1-2.原価管理の重要性

もし、原価管理を行わないと、何が起こるでしょうか。売上が伸びていると思ったら、実は原価が膨らんでおり、利益は赤字かもしれません。あるいは、利益が出ていても、原価を見直さず、低減しないことで、価格競争力が落ち、売上が下がることもあるかもしれません。企業が収益を改善させ、企業活動を維持するには、原価管理は重要です。

 

2.IT企業での原価管理

製造業の場合、部品や材料などの仕入れや製造コストなど原価を構成するものがわかりやすいと思います。それでは、IT企業における原価とはどのようなものでしょうか。

2-1.IT企業での原価計算方法

原価計算には「総合原価計算」と「個別原価計算」の2つの方法があります。

<総合原価計算>

製造業の場合、製品を1つずつ生産するのではなく、生産ラインで一度に大量生産します。そのため、製品1つにかかるコストは、その製品全体にかかるコストから個数を按分して算出します。これが総合原価計算です。

<個別原価計算>

一方で、IT企業や建設業の場合には、プロジェクト形式となっており、プロジェクト毎に仕様もかかるコストも異なります。そのため、プロジェクト単位でコストを集計します。これが、個別原価計算です。

個別原価計算では、まず人件費や経費、電気代などの費目別にコストを集計します。その後、それを発生した部門に振り分けます。部門別のコストは、更にプロジェクトに振り分けます。人事部など間接部門の費用は、個別のプロジェクトに紐かないため、一定の基準にしたがって各プロジェクトに割り振ります。

2-2.IT企業での原価

IT企業の原価に含まれるものは、主に以下の3つです。

<労務費>

エンジニアの開発工数です。材料費や金型費等は発生しないため、他業種と比較して、原価における労務費の割合が高くなります。そのため、原価低減には開発工数を適切に管理し、削減することが重要です。

<外注委託費>

動作テストやデバッグ、一部の開発を外部に委託する費用です。こちらも、原価における割合は高くなりやすい傾向にあります。

<経費>

電気代や交通費、システム利用料、IT資産購入費用などが含まれます。

2-3.原価管理の方法

原価管理は、上述の3つのステップに即した、以下のような機能/作業が必要となります。エクセル等のツールでも行えますが、原価管理機能を持ったプロジェクト管理ツールを利用する方が手間を省くことができます。

<原価計算>

原価管理システムの基本機能です。IT企業はプロジェクト別の個別原価計算を行うため、プロジェクト単位での工数/勤怠管理機能を併せ持つシステムの利用が望ましいでしょう。

<原価差異分析>

目標原価と実質原価の差異を分析する機能です。

<損益分岐点の算出>

損益分岐点とは、これを下回ると損になる、上回ると利益になるという境目のことを指します。つまり、利益ゼロ、売上とコストがイコールになっている地点のことです。利益をあげ、原価を適切に管理するためにはこの把握が重要です。

<シミュレーション>

労務費の高騰など原価に関わるリスクをシミュレーションすることで、急な環境変化に備えることができます。

 

3.IT企業での原価低減のポイント

原価管理の目的は、原価を適切に低減させ、利益を改善させることにあります。それでは、原価を低減させるにはどのようにすれば良いでしょうか。

3-1.コスト意識の浸透

IT企業では、原価における労務費や外注委託費が占める割合が高くなります。そのため、プロジェクトリーダーだけではなく、プロジェクトの各メンバーがコスト意識を持たないと、労務費が膨れ上がることになります。

もちろん、原価計算の細部まで理解して貰う必要はありません。しかし、コストの大まかな構造や損益分岐点を情報共有し、コスト低減の重要性を説明することで、メンバーがコストに対して主体的に考えるようになります。

3-2.労務費の削減

無駄な工数や業務の削減

情報共有の不足や連携の不徹底により、手戻りの作業が発生しているかもしれません。メンバーのコスト意識が高ければ、プロジェクトリーダーが把握する前に、自発的に問題提起をしてくれることも期待できます。

<顧客との仕様調整>

全ての顧客がシステムに関する知識が豊富であるわけではないため、○○の機能が欲しいといった時に、それが最適な解ではないことがあります。その機能を必要とする背景や目的を理解することで、もっと単純な機能にするなどの代替案が可能かもしれません。

一般的に、機能が複雑になるほど、テストやデバッグの負荷はあがり、顧客の使い勝手は下がる傾向にあります。仕様の調整は、双方にメリットがあります。

<システムの活用による効率性向上>

投資はかかるものの、システムを利用することで効率が向上し、労務費を下げられる可能性があります。たとえば、富士通はAIを活用したSEの業務支援ツール、KIWareを提供しています。

(参考:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/11/28.html

最先端の技術開発により、便利なシステムが登場しつつあります。また、経費ワークフローシステムなど、単純作業の負荷を軽減させるシステムなども有用です。

3-3.外注委託費の見直し

人件費の低い海外への委託など、委託業者の変更で費用削減ができる可能性があります。また、現在外部委託している作業の一部を内部で請け負うことにより、コスト削減が可能かもしれません。定期的な見直しが必要です。

3-4.経費の削減

複数のシステムを利用している場合、システムを統合することで経費の削減が可能となるかもしれません。また、PCやライセンスなどのIT資産を全社管理することで、ある部門で浮いている資産を別の部門で活用することも可能となります。

 

まとめ

この記事では、IT企業における原価管理とその重要性、原価低減のポイントを説明しました。価格競争力を保ちながら収益を上げるには、コスト意識と原価管理が重要となります。原価低減は簡単ではないため、メンバーの意識改革と同時に、仕様調整やシステム導入などの思い切った行動も必要となるでしょう。

関連コラム

おすすめ記事

まずは資料ダウンロード、無料トライアルから試しください

無料3分でわかるクラウドログ!

まずは資料請求

その他ご質問・ご相談はこちらから