ITILとは?ITIL導入がもたらすワンランク上のITサービス管理

ITILとは、ITサービス管理手法の一つで世界中の企業で活用されているものです。

ITサービスの品質向上や運用効率化を目的に、ITILの導入に関心を持った企業が増えています。ITILを適切に導入することで提供するITサービスの管理レベルを引き上げ、顧客により大きな価値を提供することが可能です。この記事では、ITILの主な内容や導入方法、導入するメリットを紹介します。

1.ITILとは

ITILとは、1980年台に英国政府がITに対する投資対効果の改善を目的に、ITサービス提供者に要求するサービス機能を整理したガイドラインがその始まりと言われています。その後、時代ごとに整理され、国際的にITサービス管理のベストプラクティス(成功事例集)と認められ、利用されるようになりました。現在はITサービス管理のデファクトスタンダードとして、世界中で参考にされており、2019年から最新バージョンはITIL4となっています。日本ではitSMF Japanが普及活動を行っています。

国際的なITサービスマネジメント規格としてISO/IEC 20000がありますが、こちらは認証制度やそのための規格であり、ITILはあくまで事例集といった違いがあります。そのため、ITILを導入するというのは、ITILを参考にして自社の提供サービスを見直し整備することであり、決まった手順や作業を意味するのではありません。

ITILの導入はITILの書籍や資料を参考にしたり、ITILに詳しいコンサルタントの指導を受けたりしながら行います。まず対象とするITサービスの範囲を定め、ITILのフレームワークに沿って各種単語の定義や目的、方法、手順、評価方法などをまとめ、現場で運用しながらPDCAサイクルを回していく流れが一般的です。

ITILの推進のためには、ITILについて理解のある社内人材も必要不可欠です。プロジェクトのメンバーが、ITILに関する知識を認定するITIL Foundation資格を取得していると良いでしょう。2019年の後半には、ITIL Managing ProfessionalやITIL Strategic Leader、ITIL Masterといった上位資格が日本でも順次リリースされる予定で、ITILに携わるメンバーは学習や資格取得が推奨されます。

 

2.ITILの構成要素

ITILにおいて、ITサービスを構成する要素をどのように定義・表現するかは時代によって変化します。2011年に作られたITIL3ではITサービスのライフサイクルの視点から構成要素が定義されていました。

2019年からのITIL4では、サービス提供サイクルの短期化や、ビジネスでの重要性の高まり、SNSの普及や、ワン・トゥ・ワンマーケティングの必要性といったITサービスをめぐる変化に鑑み、エンド・トゥ・エンドの観点から構成要素が定義し直されています。ITIL4では以下の3つのカテゴリーと34のマネジメントプラクティスとして要素が定義されており、各マネジメントプラクティスのフレームワークに従って自社サービスの開発や見直しを行うことが可能です。

2-1.一般的なマネジメントプラクティス

アーキテクチャ管理/継続的な改善/情報セキュリティ管理/ナレッジ管理/測定と報告/組織変更管理/ポートフォリオ管理/プロジェクト管理/リレーションシップ管理/リスク管理/サービス財務管理/戦略管理/サプライヤ管理/人材管理

2-2.サービスマネジメントプラクティス

可用性管理/ビジネス分析/キャパシティとパフォーマンス管理/変更コントロール/インシデント管理/IT資産管理/監視とイベント管理/問題管理/リリース管理/サービスカタログ管理/サービス構成管理/サービス継続性管理/サービスデザイン/サービスデスク/サービスレベル管理/サービス要求管理/サービス検証とテスト

2-3.技術マネジメントプラクティス

展開管理/インフラストラクチャとプラットフォーム管理/ソフトウェア開発と管理

 

3.ITIL導入による主なメリット

ITILの導入によって得られるメリットを解説します。

3-1.ビジネス視点でのITサービス管理の意識が高まる

ITサービスの管理を担当するのは現場のエンジニアが多く、不必要な新技術の導入など技術者目線のプロダクトアウト式のITサービスになりやすい面があります。ITILを導入することで、顧客へ提供する価値を第一にしたITサービス管理の意識を高めることが可能です。

3-2.継続運用を前提にしたシステムの開発、導入が可能になる

現代のITサービスは、一度開発して終わりではなく、絶えずバージョンアップによる機能追加やセキュリティ上の脆弱性改善を行うことが必要で、それが顧客へ提供する価値につながります。こうした意識のもと、継続運用を前提にしたシステム開発や導入が可能です。

3-3.顧客満足度が高まる

ITILの事例を参考にしたチャットボットによる問い合わせの自動化や、システムトラブル時のSNSによる情報提供など、顧客ニーズに合わせたサービス提供を意識した運用で、顧客満足度を向上させます。

3-4.中長期的なコスト改善へ

ITILによるシステム管理は、ノウハウの共有やオペレーションの整備を通じて効率的な管理を可能にします。中長期的には開発・運用人員の削減やサービスの企画開発スピードの向上も期待できます。

3-5.インシデントの減少、レジリエンスの強化

インシデント発生時の対応がマニュアル化されることで、早期のサービス復旧や報告を可能にします。また発生したインシデントを分析し、対策を繰り返すことにより、インシデントの発生率を下げ、サービスの安定提供という顧客への価値を創造します。

 

4.ITIL導入にあたっての注意点

ITILの導入では、管理目標を定めるだけで形骸化したり、過度の管理により組織が疲弊したりすることがあります。導入にあたっての注意点についても確認しましょう。

4-1.最初から完全な導入を目指さない

ITILは、ITサービス管理の実践規範ではありますが、その内容は詳細にわたり、一足飛びに理想的な形を構築することはどんな組織だとしても不可能です。自社の状況と相談しながら、段階的に取り組むことを意識していくことが大切です。

4-2.3つのPのバランス

従来からITILでは、「3つのP」と言われる「プロセス(Process)」「人(Person)」「製品/技術(Product)」のバランスが大切とされています。3つのPの適切な割合は4:4:2と言われており、技術中心に陥らないよう注意する必要があります。ITIL4ではこの「3つのP」は「4つのP」としてその内容も再整備されていますが、導入にあたって大切な考え方であることは変わりません。

4-3.ITILは仕組みを作って終わらず、運用しながらPDCAを回すことが大切

ITILで最も大切なことのひとつが、継続的にPDCAを行いながらマネジメントサイクルを回していくことです。顧客がサービスに求める価値や、それを実現するために最適な方法は常に変わっていきます。運用における継続的な改善が長期的な顧客との関係作りや提供価値に大きな意味を持つことをサービスに関わる全員が意識することが大切です。

 

5.まとめ

ITILはITサービス管理に求められる内容をまとめた規範事例集であり、サービスの企画から開発、運用、利用者との関係作りなどITサービスを提供する企業にとって参考になる視点と方法を提供してくれます。ITILの学習や導入により、提供するITサービスの価値や、現場の管理レベルをより高めることが可能です。
また、ITILの円滑な運用にもシステムが必要です。インシデント管理ツールやプロジェクト管理ツールなどが必要となるでしょう。

参考:itSMF Japan 「ITIL®とは」

参考:ITプレナーズ ITIL4最新情報

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