ITプロジェクトにおける原価管理と間接費・直接費を解説

近年、あらゆる業界でデータ活用が進み、コストと利益のシミュレーションが容易になりました。そこでますます存在感を増しているのが「原価」です。さらに、適切な「原価管理」が行わなければ、コスト削減・利益確保の青写真は描けません。これまで、原価管理は主に製造業におけるコスト管理手法として知られていました。しかし、あらゆる業種・業態にコスト削減・利益追求の考えが浸透した結果、ITプロジェクトにおいても原価管理が活用されています。ただし、製造業とは計算・管理手法などが異なることに注意しておきましょう。ここでは原価管理の解説やそこで役立つツールを紹介します。

1.原価管理とは?

まず、原価管理の基礎についておさえておきましょう。原価管理とは、「原価計算(ツール)の結果をどう管理するかを定めること」と言えます。ちなみに原価管理の定義は、現在の財務省(旧大蔵省)が1962年に制定した「原価計算基準」に記載されています。この原価計算基準の第一章で、原価管理は次のように定義されています。

“ここに原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう。”
この一文から、原価管理は次の4ステップで構成されると言えるでしょう。

  1. 原価管理では、まず原価の標準を設定する(標準原価の設定)
  2. 原価の実際の発生額を計算、記録する(実際原価の把握)
  3. 2(実際原価)と1(標準原価)を比較して、差が発生した原因を分析する
  4. 3の分析結果を経営者に報告し、原価能率を上げるための措置を講ずる

少しややこしいのですが、要は「常に変動する原価を把握し、経営のために役立てること」と言い換えることができます。原価管理は、単一の計算方法を指すのではなく、事業・プロジェクトを黒字に導くための管理手法なのです。

原価管理の基礎「原価計算」とは?

この原価管理の基礎となる数値は、原価計算によって算出されます。原価計算とは、モノやサービスが作られる過程において必要な要素(材料)を計算することです。実際の原価にはいくつかの種類があり、目的や生産形態、加工形態などによって使い分けるのが通常です。例えば原価集計の対称軸が「製造業における大量生産品」の場合は「総合原価計算」を用います。これに対し、対称軸がサービスや受注生産品である場合は「個別原価計算」をつかって原価を算出します。さらに、製品・サービスを標準原価で計算するか、実際原価で計算するかでも違いがあり、複数の計算方法を組み合わせた原価管理が求められるわけです。

一般的にITプロジェクトでは、「実際に発生した費用(実際原価)」をベースとした「個別原価計算」を用いることが大半で、「プロジェクト別個別原価計算」とも呼ばれています。

 

2.ITプロジェクトにおける原価管理~間接費・直接費は?

では、もう少し具体的にITプロジェクトにおける原価管理について解説します。プロジェクト別個別原価計算では、製品・サービスを作るまでにかかった費用を「直接費」「間接費」に分類します。ここで問題になりがちなのが「間接費」の取り扱いです。下記は、一般的なITプロジェクトにおける直接費と間接費の分類です。

ITプロジェクトにおける個別原価計算

  • 直接費
  • 労務費
    プロジェクトに直接参画するメンバーの人件費。
    内訳としては、基本給、割増手当、賞与手当、退職金、法定福利費など
  • 外注委託費
    協力会社への外注費用など
  • 経費
    メンバーの交通費、通信費、端末などのコスト
  • 間接費
  • 間接労務費
    研修費用、会議やミーティングへ参画する他部門人材の人件費など
  • 共通費
    開発部門全体で発生する共通費用(水道、光熱費など)

ITプロジェクトにおける間接費の取り扱い

次に、間接費の取り扱いです。間接費については一旦部門別で集計した後、それぞれのプロジェクトに配布するかたちをとります。具体的には、以下のようなステップです。

1.まず「費目別計算」を行います。ここでは費用の性質によって直接費、間接費に分類し、それぞれ集計を行います。

2.次に「部門別計算」を行います。1で集計した間接費を「部門個別費(部門特有の費用)」「部門共通費(各部門で共通した費用)」に分類し、集計します。

3.最後に「プロジェクト別計算」を行います。直接費はプロジェクトごとに集計し、間接費についてはプロジェクトごとに配賦し、これらを合算して原価とします。

実際に行うべき原価管理は?

原価計算の結果を受け、下記のような原価管理を行います。

  • 原価差異分析
    冒頭で紹介した旧大蔵省の定義にもあるように、原価管理の中心とも言えるのが「原価差異分析」です。標準原価と実際原価の差を明らかにし、差が発生した原因を分析します。
  • 損益分岐点の算出
    いわゆる「黒字・赤字の分岐点」です。原価計算が正確にできていないと信頼性のある損益分岐点が算出されず、損益分岐点が曖昧であるとプロジェクトで利益を出す道が見えてきません。「外注費を削る」「作業用PCや開発環境用サーバのハードウェア調達コストを下げる」といったコスト削減策も、損益分岐点があってこそ具体性を帯びるのです。
  • シミュレーション
    人件費をはじめとした労務費の高騰や、ハードウェア、ソフトウェア資源の価格変動などを見据え、環境変化のシミュレーションを行います。

こうした原価計算・原価管理は、表計算ソフトで行っているケースが少なくありません。たしかに表計算ソフトでも、ある程度は対応可能です。しかし、間接費の分類(部門別なのか共通なのか)や、メンバーの稼働が労務費なのか外注費なのかといった判断が増えてくると、管理が煩雑になってきます。さらにITプロジェクトは短期間でメンバーが入れ替わることも珍しくないことから、手入力での集計・分析には限界があるでしょう。

そこで注目すべきがプロジェクト管理ツールです。

 

3.ITプロジェクトの原価管理に役立つツール

ITプロジェクトの原価計算・原価管理を行うには、プロジェクト管理ツールの活用がおすすめです。プロジェクト管理ツールでは、プロジェクトごとに原価予算と原価実績を登録し、個別に管理できることから、原価計算後の差異分析が容易になります。また、煩雑になりがちな間接費についても、費目ごとに詳細なコスト計上が可能で、精緻な集計データが得られます。

プロジェクト管理ツールでは、これら原価予実管理や損益計算、経費・工数予算算出といった機能により、精緻な原価管理とプロジェクトの黒字化に貢献するツールといえるのです。

 

4.まとめ

この記事では、ITプロジェクトにおける原価管理・原価計算と、そこで役立つツールについて解説してきました。複数の企業からメンバーが集められるITプロジェクトでは、直接費、間接費の管理が煩雑になりがちです。プロジェクト管理ツールの活用で、効率よく正確な原価計算・原価管理を行い、プロジェクトの黒字化を目指してみてはいかがでしょうか。

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