原価計算における配賦とは?配賦基準と実施のポイントを解説

 

原価計算において、製品の製造やプロジェクトの実施に直接関係しない間接費を原価に反映させるために、配賦を行います。しかし、ベストな配賦方法は必ずしも一通りではなく、配賦基準をどのように設定するかは配賦を行う担当者の悩みのポイントとなります。
この記事では、配賦の概要やメリット・デメリットを紹介しつつ、主な配賦基準と配賦を行う際のポイントについて解説します。

1. 原価計算における配賦とは

配賦とは、原価計算において複数の製品やプロジェクトなどに共通して発生している間接費(例:光熱費や建物の減価償却費など)をそれぞれの製品・プロジェクトの製造原価として割り振ることをいいます。間接費を正確に振り分けることは難しいため、何らかの配賦基準を設け、基準に沿って間接費を案分することが一般的です。

1-1.配賦の目的

 

配賦の目的としては、大きく2つ存在します。一つは、各製品・プロジェクトの原価計算を正確に行い、製品・プロジェクトの利益を正しく求めることです。共通的に発生している間接費であっても、製品やプロジェクトを実施する上では必要な費用であるため、原価として加味することが妥当です。
もう一つは、配布先の各部門に、自部門で計上している費用だけでなく、会社全体で発生している費用について意識させ、トータルで黒字となるように動機づけることです。共通的に発生している費用は、ともすれば自分たちが発生させているコストとして認識されません。自部門の管轄領域だけではなく、製品製造やプロジェクト実施のために全社的に発生している費用を認識させることが、会社として利益を確保する上で重要となります。

1-2.配賦の計算方法

配賦を行うためには、まず配賦基準を設定します。配賦の実施方法は法令等で定められているわけではないため、各社で裁量を持って実施することができます。配賦基準として、部門ごとに配賦する方法や製品ごとに配賦する方法から選択し、その割合(配賦率)は人員比率や工数比率などから決定します。

次に、配賦する対象となる間接費を集計します。集計した間接費を、配賦基準に従って各部門や各製品に案分します。例えば、間接費用として10,000円発生しており、この費用をA製品、B製品、C製品に工数比率で配賦するとしましょう。A製品の工数が20時間、B製品が30時間、C製品が50時間の場合、工数比率を用いてそれぞれ2,000円、3,000円、5,000円の間接費が製造原価として配賦されることになります。

2. 配賦のメリットとデメリット

以下では、配賦のメリットとデメリットについて解説します。

2-1.配賦を実施するメリット

明確に配賦基準を定めて配賦することで、各部門はコスト意識を持ち、コスト削減のモチベーションアップにつながります。配賦を行わなければ、各部門は共通的に発生している経費を無尽蔵に使ってしまうでしょう。共通的な経費であっても、製造コストに反映されていることを意識させることで、共通的な経費のコスト削減につながります。

2-2.配賦を実施するデメリット

一方で、配賦基準は様々なものが考えられるため、全社的に納得感のある配賦を行うのは難しいです。会社が各部門やプロジェクトに提供しているサービスをそこまで利用していないのに、公平感のない配賦基準によって多く間接費を負担させられる部門やプロジェクトチームから不満が生じることもあります。

このような事態を避けるためには、できるだけ納得感が得られる配賦基準を設定することがポイントとなります。

3. 主な配賦方法と配賦基準

以下では、主に利用される配賦方法とその基準について解説します。

3-1.部門別配賦

部門別配賦は、自社の部門を間接部門と直接部門に分けて、間接部門で発生した費用を配賦率に従って直接部門に配賦する方法です。日本企業の組織は、一般的に現業部門とバックオフィス部門に分かれるケースが多いです。人事部や経理部、購買部などのバックオフィスで発生した費用を、販売部や製造部などの現業部門に配賦するのが、部門別配賦となります。

部門別配賦は、さらに直接配賦法、階梯式配賦法、相互配賦法の3種類に分けられます。以下で、それぞれの配賦方法の概要について解説します。

・直接配賦法:最も簡便な配賦方法。間接部門間での配賦を行わず、間接部門の間接費を一度で直接部門に配賦する方法。
・階梯式配賦法:間接部門に優先順位をつけて、優先度が高い部門から低い部門へ配賦を行う方法。
・相互配賦法: 間接部門間で発生している間接費を一度だけ配賦した後に、間接部門の間接費を直接部門に配賦する方法。手間を省きつつ、より実態に即した配賦が可能。

3-2.製品別配賦

製品別配賦は、製品の製造工程の中で生じる費用を直接費と間接費にわけ、配賦率に従って間接費を各製品に案分する方法です。部門別配賦を実施した後に、自部門内で発生した間接費用を各製品に配賦する際などに用いられることも多いです。

一般的に製品の製造にあたっては、検査の共通化や製造ラインの共通利用などが行われていますが、このようなコストを各製品に配賦するのが製品別配賦です。

3-3.配賦率の決定

部門別配賦、製品別配賦いずれも、間接費を配賦するためには配賦の割合を決定する必要があります。これが配賦率です。配賦率として用いる主な基準は、人員比率、工場の利用面積比率、機器の利用時間などが考えられます。

配賦率の決定方法には明確な基準がないものの、業界団体などが定めるガイドラインが存在するケースもあります。例えば、内閣府が作成している公益認定法人向けの「公益認定等ガイドライン(※)」では、配賦率の基準を「建物面積比」「職員数比」「従事割合」「使用割合」の4つと定めています。

※参考:内閣府「公益法人制度関係法令とガイドライン」
https://www.koeki-info.go.jp/pictis_portal/other/houreiguideline/houreiguideline.html

 

 

4. 正確な配賦のためには工数管理が有効

正確かつ不満が発生しないように配賦を行うためには、納得のいく配賦基準と配賦率を定めることが重要となります。人員数や建物面積などの確定値を使う場合であれば明確に配賦率を定められるものの、工数比率など実績値を用いる場合は正確な実績を把握する必要があります。

工数を基準として配賦を行う場合は、工数管理ツールを利用して工数を正確に把握できるようにするべきでしょう。しかし、工数入力は面倒に思われるケースが多く、適当に入力されてしまうこともあります。

当社が提供するクラウドログでは、直感的でグラフィカルな工数入力が可能です。忙しいプロジェクト中であってもほんのわずかな時間で無理なく登録ができ、正確な工数の把握に役立てることができます。

まとめ

この記事では、配賦についてその概要やメリット・デメリット、主な配賦基準について解説を行いまたした。配賦のポイントは、公平感のある基準の設定にあります。各部門やプロジェクトが納得できるような基準を定めつつ、配賦率に実績値を用いる場合は正確な実績収集を行うことが公平感を得るための有益な方法となるでしょう。

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