DX推進の要?エンタープライズアーキテクチャ(EA)をわかりやすく解説

エンタープライズアーキテクチャ(EA)に改めて注目が集まっています。エンタープライズアーキテクチャは業務改善や生産性の向上、資産の有効活用を目指す管理者にとって重要なキーワードです。2004年頃に一度注目を集め、下火になったエンタープライズアーキテクチャですが、基本情報技術者試験や、ITパスポート試験の出題対象になるほど改めて注目を集めているのはなぜなのでしょうか。
ここでは、エンタープライズアーキテクチャとは何か、その構造と、再度注目された背景にあるDX(デジタルトランスフォーメーション)との関係についてもわかりやすく解説します。

エンタープライズアーキテクチャ(EA)とは

エンタープライズアーキテクチャ(Enterprise Architecture)とは、組織全体の業務とシステムをモデル化し、全体最適化によって顧客のニーズや社会環境に柔軟かつスピーディに対応するための知識体系で、フレームワークでもあります。
「アーキテクチャ」には「構造」や「構成」という意味がありますが、エンタープライズアーキテクチャでは、以下にあげる4つの要素で組織全体の業務やシステムの構造・構成を捉え、全体最適化を行います。

ビジネスアーキテクチャ(BA)

ビジネスに直結する、ヒト、モノ、カネなどの構造や業務プロセス、ビジネスの設計思想など、事業全体として整理したものを指します。

データアーキテクチャ(DA)

事業に必要とされるデータを主軸に捉え、可視化したものを指します。各データの関連性や構造を示したもので、データの統合や標準化の考え方もDAに含まれます。

アプリケーションアーキテクチャ(AA)

業務を推進する上で必要となる個別のシステムの機能や関連性、システム間の互換性など、アプリケーションの構成を全体的に示したものを言います。

テクノロジーアーキテクチャ(TA)

ハードウェアやソフトウェアという技術の変化を考慮し、企業全体のシステム基盤をどのように構成するのか、技術標準についての検討や考え方を可視化したものを指します。

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なぜエンタープライズアーキテクチャ(EA)が改めて注目されているのか

なぜエンタープライズアーキテクチャ(EA)が改めて注目されているのでしょうか。その大きな理由としてDXの高まりがあります。ここでは、DXの高まりがなぜエンタープライズアーキテクチャ(EA)に関係するのかを順に解説していきます。

DXの高まり

経済産業省の「DX白書2021」では、下記調査結果が出ています。

日本企業はDXに「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」割合が21.7%、「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取組んでいる」割合が23.6%であり、約45%は全社戦略に基づいてDXに取組んでいる。

このように、多くの企業がDXに取り組み始めています。

DXの実情

経済産業省の「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」では、

多くの経営者がDXの必要性を認識し、DXを進めるべく、デジタル部門を設置する等の取組みが見られます。しかしながら、PoC(概念実証)を繰り返す等、ある程度の投資は行われるものの実際のビジネス変革には繋がっていないという状況が多くの企業に見られる

とあり、着手しても効果が得られていない実情があります。

DXが進まない、うまくいかない理由

経済産業省の「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」では、DXがうまくいかない理由のひとつとして下記のような調査結果が出ています。

IT システムが、いわゆる「レガシーシステム」となり、DX の足かせになっている状態が多数みられるとの結果が出ている(レガシーシステムとは、技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題があり、その結果として経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっているシステム、と定義している)。

そのため、DXを進めるにはレガシーシステムの見直しが不可欠であるとしています。

エンタープライズアーキテクチャ(EA)はレガシーシステムを見直すことができる

ここまでの解説の通り、DXには正解がなく、失敗も多い実情があります。エンタープライズアーキテクチャ(EA)には、前項で解説した4つの要素に加え、AsIsとToBeを考え、現状から理想目標に至る時系列的な関係の明確化と改善サイクルを確立するというフレームワークがあります。そのフレームワークがDXを行ううえで親和性が高く、エンタープライズアーキテクチャ(EA)を推進することで、DXを行う基盤が整うという点があります。
そのため、2004年にエンタープライズアーキテクチャ(EA)が流行した時とは違う観点で改めて注目されています。

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DX推進のためのエンタープライズアーキテクチャ(EA)策定のポイント

ここでは、DXを推進するためのひとつの手段として、エンタープライズアーキテクチャ(EA)を取り入れる際のポイントを解説します。

エンタープライズアーキテクチャの4つの構造をDX観点で考える

DXの推進を前提としたエンタープライズアーキテクチャ(EA)を行うには、1章で解説した4つの構造をよりデジタルな観点で捉えることがひとつのポイントです。

ビジネスアーキテクチャ(BA)

ビジネスに直結する、ヒト、モノ、カネなどの構造や業務プロセス、ビジネスの設計思想をZ世代やミレニアル世代と呼ばれるようなデジタルネイティブである消費者の行動を考慮したうえでの事業の見直しを行います。

データアーキテクチャ(DA)

SNSやIoTのようなビッグデータへの対応や分析、活用や、BIツールなどの利用による企業内データの統合、分析、再配置などのように、DXを考慮したDAでは戦略的なデータ活用が求められます。

アプリケーションアーキテクチャ(AA)

AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を取り入れるなど、生産性や効率化ができるデジタルソリューションを取り入れたアプリケーション構造を検討します。

テクノロジーアーキテクチャ(TA)

ビジネスのスピードに即座に対応できる柔軟な技術を取り入れたり、ビッグデータを扱えるような環境やハードウェア資源を効率的に活用するアーキテクチャを取り入れたりするなどを行います。

DXを進める上でのAsIs、ToBeを定義する

AsIs、ToBeというフレームワークはエンタープライズアーキテクチャ(EA)に元々あるものですが、DXの目的を絡めて定義します。

AsIs:現在地を知る

現状を正しく知ることが重要です。現在のシステムやビジネスの状況を客観的に捉えることで、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の4つの構造も現状が正しく認識でき、ToBeをぶれずに定義することができます。ここで重要なことは、関係者が共通認識を持つことや可視化することです。

ToBe:どこに向かうのか

エンタープライズアーキテクチャ(EA)でのToBeも全体最適を求め定義するものですが、DXを考慮したToBeでは、共感やテクノロジー、ビジネスの面白さ、未来を感じるエモーショナルな要素を入れた方向性や目的が必要です。

Transformation:変革

エンタープライズアーキテクチャ(EA)にはTransformationの概念はありませんが、DXの本質は変革であるため、小さく、かつスピード感を持ってエンタープライズアーキテクチャ(EA)のフレームワークを軸にしながら改善を繰り返すアジャイルで推進し、変革を続けます。

まとめ

ここまで、エンタープライズアーキテクチャ(EA)について解説してきました。なぜ再注目されているのか、DXとの関係性も理解頂けたのではないでしょうか。多くの企業がDXを推進するなかで、エンタープライズアーキテクチャ(EA)はフレームワークに沿って現状を把握し、ToBeを描きやすいメリットがあります。これらは今後の事業を考えるうえで、ひとつのヒントになり得るでしょう。

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