プロジェクト成功の鍵を握る「山積み表(リソースヒストグラム)」

プロジェクトを成功に導く要因として、どのようなものが挙げられるでしょうか。

重要な要因のひとつに、スコープ(作業範囲)のコントロールがあります。スコープがコントロールできている状態とは、スコープに利害関係者の要求がきちんと反映されていて、なお且つ予算や納期とバランスがとれていることを意味します。このバランスが崩れると、「不満足、赤字、遅延」といったプロジェクトの失敗につながります。

スコープを適正にコントロールするためには、プロジェクトの要員計画と管理、要員計画に基づいたプロジェクト見積の妥当性チックなどが必要になります。そして、要員計画は、「山積み表(リソースヒストグラム)」によって計画・管理されます。

この記事では、「山積み表」によるプロジェクトの要員計画の基本やその必要性、要員計画に基づいたプロジェクト見積の妥当性チックなどを解説します。

山積み表

山積み表(リソースヒストグラム)とは、横軸に時間の経過(月・旬・週・日など)を取り、縦軸にその時間に使用を割り当てられている資源(人員・設備など)の数量を積み上げ棒グラフにした、ヒストグラムのことです。

プロジェクトでは、どの資源がどの時期にどれだけ必要になるかを事前に計画することが求められます。これらの計画・管理活動に用いられるツールが山積み表です。

先ず、ゴールの実現に必要なすべての作業を洗い出し、それを実施するメンバー(人的資源)に割り当てます。割り当てられた作業を、作業内容・担当者・開始日・終了日・作業間の関連などを置き、横軸に日時(時間)をとって、工程計画(進捗状況などを視覚的に示す)を作成すると、同じ時期に作業が集中してしまう場合があります。これを避けるため、作業負荷の状況を把握する手法として山積み表が用いられます。山積み表は「リソースヒストグラム」「要員負荷ヒストグラム」とも呼ばれ、100%を超える負荷状況が発見された場合、プロジェクト管理者はその作業の実施時期をずらしたり、担当者の変更やメンバーの追加などの対策を行なったりします。

要員計画

プロジェクトの現場では、技術者・作業者等にとって経済的でかつ合理的であるように各作業の作業時間及び人数等を決めます。これを、要員計画(マンパワースケジューリング)と呼びます。

具体的な進め方は、作業を進めるために必要な技術者・作業者などの資源を各作業について考え、日々の累計を算出します。もし、能力の総合計(能力線)を上回るピークを生じたときには、能力線を下回る余裕時間を利用して、資源の量を平均化します。

プロジェクトの納期を守るためには、負荷を適切に振り分けなければなりません。もし、要員計画を実施していなければ、負荷に対して仕事の能力が追いつかず、計画(納期)に遅れてしまう可能性があります。

山積み表を作成した際に、能力線を下回る期間がない場合、絶対的なキャパシティ不足であることが分かります。この時には、スコープ(作業範囲)や納期の変更が可能な場合を除き、人員の追加などのキャパシティの追加が必要です。

山積みの方法

続いて、山積みの方法を紹介します。

山積みの計算は要員計画の基本となるものです。以下の事例は、ネットワーク日程計算で決められた作業日程通りに業務を進めていくものと仮定した場合の計算法です。山積みの出し方には、最早時刻の場合と、最遅時刻の場合の2つを行うことができます。その手順は次の通りです。 

①日程計算を行い、何月何日にどういう職種の人員が何人必要かを表します。

②日程計算の結果を最早時刻または最遅時刻に合わせて、タイムスケールで表示します。

③縦線間の作業で必要な人員について集計します。

④山積み表を描きます。

山積み表を作成したら、次にその期間ごとの生産能力を反映させた「能力線」を引いてください。この能力線から溢れている負荷は、負荷配分が必要となります。

この手順に従って、図8.1のネットワークを例にして、山積み表を作成してみましょう。

 

図8.1  ネットワーク(例)

図8.2 最早で作業した場合

図8.3 最遅で作業した場合

※出典:ものづくりドットコム「8. 配員計画(マンパワースケジューリング)」

山崩しの目的

次に、山崩しについて紹介します。

山積み表を作成してみると、多くの場合凸凹があり極めて効率の悪い計画であることが分かります。
その凸凹を平均化させるのが山崩しの目的です。山崩し計算は、日程計算で分かっている作業の余裕日数を利用して、いくつかの作業の開始を遅らせることで平均化を図ります。つまり、最早開始計画と最遅開始計画の間で、可能な範囲内で余裕を移動すればよいのです。ただし、作業の順序関係、人員の制限条件は満足しなければなりません。

手順は次のようになります。

①最早開始時刻による山積み計算を行います。

②作業者の制限数を超えるところ(今回例の場合は7人)で、余裕日数の範囲内で作業の開始を遅らせます。作業の優先度には余裕日数をとり、余裕日数の小さいものほど優先度は高いとします。

③工期全体に渡り②を繰り返します。

図8.4 山崩しの計算

※出典:ものづくりドットコム「8. 配員計画(マンパワースケジューリング)」

このように、仕事の能力に対する負荷を平準化し最終的な日程計画を作成します。もし山積み表を作成した際に、能力線を下回る期間がない場合は山崩しができません。

この場合は、絶対的なキャパシティ不足になります。スコープ(作業範囲)や納期の変更が出来ない場合には、人員を追加して仕事の能力を向上させる必要があります。

山積み表によるプロジェクトコストの妥当性チェック

プロジェクトの成功が「利害関係者の満足、納期の順守、なお且つ受注企業の黒字」だとすれば、山積み表を活用して、プロジェクトコストの妥当性をチェックすることの重要性は、議論の余地がありません。

システムインテグレータ企業にとって、プロジェクトコストの妥当性は非常に重要なテーマです。高く見積れば競争力を失いますし、低く見積れば赤字プロジェクトになってしまいます。そして、世の中には受注獲得に力点を置きすぎた赤字プロジェクトも数多く発生しています。見積精度の向上は、企業の競争力につながります。

必要工数を要員単位に展開し、役割分担と投入時期まで考慮したものが山積み表です。この総工数はもちろん見積コストと整合性を持っていなければなりません。山積み表を作成することは、要員計画という本来の目的だけでなく、見積の妥当性チェックにもつながるのです。

まとめ

この記事では、「山積み表」によるプロジェクトの要員計画の基本やその必要性、要員計画に基づいたプロジェクト見積の妥当性チックなどを解説してきました。

山積み表は、本来の目的である要員計画だけでなく、プロジェクトの見積の妥当性チェックにも活用できます。要員計画と管理により「利害関係者の満足と納期の順守」を図ること。なお且つ、納得性の高い見積もりにより「受注企業が黒字になる」こと。

プロジェクトの成功を意図して、一定規模以上のプロジェクトでは、山積み表(リソースヒストグラム)を作成し、活用することをお奨めします。

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