あなたの会社は大丈夫?どこよりも優しい「36協定」徹底解説

2016年、前途ある電通の新入社員が過労により自らの命を絶ったことに日本中が震撼し、働き方に対して危機意識を高く持つことになりました。

電通の事件も含めて過労が問題となる際、残業時間を規定した36協定の順守が確認されます。それでは、36協定とは一体どのような内容なのでしょうか?

この記事では、36協定の基本情報から企業の労働時間の実態について解説します。今一度、自社が36協定を順守できているか、そのための環境が整っているかを確認しましょう。

 

 

1.36協定での残業時間の上限は何時間?

1-1.そもそも36協定とは

労働基準法では、1日8時間1週40時間を法定労働時間とし、これを超えての労働を禁止しています。ただし、労使協定を結べば、残業や法定外休日での労働を認めています。このことが36条に記載されているため、この協定が36協定と呼ばれています。

従業員の数によらず、残業や休日出勤をさせる場合には36協定を必ず締結し、労働基準監督署に提出する義務があります。なお、協定を結ぶ労働者とは、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には労働組合、ない場合には労働者の過半数の代表者となり、書面または就業規則によって締結しなければなりません。

1-2.36協定で定める残業時間の上限

36協定を結んだとしても、残業時間の上限は以下と定められています。(一般労働者の場合)

期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1か月 45時間
2か月 81時間
3か月 120時間
1年間 360時間

厚生労働省 時間外労働の限度に関する基準

ただし、決算対応やトラブル対応などの臨時の場合に限り、上記を超えた上限を設定するという特別条項をつけることができます。なお、一部の労働については延長時間を設定する必要さえありません。このため、100時間以上の残業が続いてしまう人が存在し、過労死に繋がっています。

そこで、政府は2018年の働き方改革関連法案において、特別条項の上限を単月100時間未満、複数月平均80時間、年間720時間と定めることとしました。法案上では単月の上限は100時間ですが、一般的には過労死のリスクは80時間以上で高まるとされ、労働基準局の調査対象となる可能性も高くなります

また、2017年に経団連が発表した調査では、2016年の月間の時間外労働は、45時間以下が83%と最も多く、60時間を超える割合はわずか7%です。もし、あなたの会社の残業時間が60時間を超える場合は、他社と比較して長時間労働であることを認識する必要があります

日本経済団体連合会 2017 年労働時間等実態調査 集計結果 P.6

 

2.36協定違反のリスクとは?

2013年に厚生労働省が行った調査では、中小企業の約57%が36協定を結んでいないにも関わらず、時間外労働をさせる違法行為をしていることが判明しました。36協定の違反にはどのようなリスクがあるのでしょうか?

2-2.書類送検のリスク

上限時間を超えて労働をさせた場合には、労働基準法違反として、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

また、厚生労働省は長時間労働に対する取り締まりを厳しくしており、書類送検した企業をHP上で公表しています。このいわゆるブラックリストへの掲載により、社会的評価も落ちますし、採用活動にも支障をきたすことが想定されます。

2-3.従業員の健康被害のリスク

過重労働は、脳疾患、心疾患、うつ病などによる過労死のリスクをもたらします。命の危機に晒されなかった場合でも、退職や休職を余儀なくされることもあります。現在は労働人口が減少しており、人材を失うことは企業にとって大きな痛手となります。また、休職や退職までいかなくても、長時間労働の継続は、疲れを残しやすく、作業効率の低下に繋がります。

 

3.36協定の違反事例

では、実際にはどのような違反事例があるのでしょうか?特に気を付けるべき事例を紹介します。

3-1.36協定の締結が無効であった場合

電通は、労働組合との間で36協定を締結していましたが、組合員数が従業員の過半数を占めておらず、無効であったことが判明しました。

また、2016年には「和食さと」などの運営母体であるサトレストランズシステムが、違法残業を行わせていたことが報じられました。この際、労働者の代表の選定に不備があり、36協定も無効であったことが明らかになりました。中小企業など、労働組合が存在しない場合には、労働者の過半数を代表する者を選出する必要がありますが、監督もしくは管理の地位にある者ではないことが規定されています。和食さとの場合には、店長などの管理地位にある人を代表者としていたと思われます。

3-2.労働時間を適切に把握していない場合

退勤処理後も業務をさせている、いわゆるサービス残業は、残業代の未払いも含み、厳しく処罰される対象です。勤怠記録上では、問題ないように見せられたとしても、本人の出社・退社の記録は証拠能力を持ち、パソコンのログオン記録など複数の証拠からも立証することが可能です。

また、平成12年に最高裁は、三菱重工業長崎造船所に対して、作業着の着替え等の準備時間も労働時間とであるとし、賃金の支払いを命じました。着用が義務付けられている作業着への着替えなど、指揮命令下の時間は労働時間に入るという判断で、これらの時間も記録に残す必要があります。

 

4.36協定を順守するための環境とは

このように、36協定の違反は労使共にリスクがあります。一方で、長時間労働が定常化してしまっている企業もあるでしょう。違反のない労働環境を整えるにはどうしたら良いのでしょうか?

4-1.勤怠管理を徹底する

毎日の勤怠登録に抜け漏れがないようにするほか、残業上限に近づいた場合には、管理職も把握し、業務量を調整する必要があります。近年は働きやすさを考慮して、フレックス時間を導入する企業もあり、多様な働き方をサポートし、割増賃金も適切に支払うためには管理が煩雑になるタイムカードではなく、システムによる勤怠管理が必要です。

4-2.業務効率を上げる

残業時間の減少は不可能と思う企業もあるかもしれません。しかし、慣習の改善によって、労働時間の減少に成功した企業は数多くいます。

経団連の調査によると、長時間労働を招く商習慣として多くあげられたものは、顧客からの単納期要望や顧客要望への対応です。かつて言われていた「お客様は神様」という考え方は近年疑問視されるようになってきました。自社の利益を適正に保つためにも、対応できる部分とできない部分を明確にすると同時に、手戻りが発生したり、対応事項が増えたりすることのないよう、工数の見積もりや要件について、最初に顧客とすり合わせる必要があります。

また、不必要な会議、資料などの削減や一部の業務のシステム化、外注などによって、各業務の効率化を図る余地があります。管理職は、特定の人に業務が集中していないかも把握し、適切に業務管理を行わなければなりません。

4-3.年休の取得率向上

政府も呼びかけている年休の取得率の向上は、労働時間の減少に繋がります。

長時間労働の業種トップに入るコンサルティング会社の中には、プロジェクトが終了した後には、長期の休暇を取得することを奨励している企業もあります。繁忙期明けにリフレッシュ期間を設定することは、健康面でもメリットがありますし、メリハリをつけることによって、業務の効率化に繋がる効果も期待できます。

 

5.まとめ

この記事では、残業を行うためには届出が必須である36協定について説明しました。36協定の順守は、企業が継続するため、従業員が能力を発揮するための基本となるものです。

長時間労働が定常化している職場では、労働時間の減少は難しいと考えてしまうかもしれませんが、業務改革により効果が得られることが既に複数の企業によって証明済です。まずは、勤怠管理の徹底、業務管理、年休の取得率向上から始めましょう。

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