その働き方は労働基準法の範囲内?働き方改革の改正点も含めて確認しよう

2018年6月、働き方改革関連法が可決・成立しました。この法案は、労働に関連する8つの法律を改正し、働き方を是正するものです。問題意識の高い企業では、働き方改革を進めていましたが、今後はより多くの企業に労働環境の一層の改善が求められます。

この記事では、その中でも労働環境の基本となる労働基準法について説明します。

 

 

1.労働基準法の概要と働き方改革法での改正点

労働基準法は、労働者を守るために最低限の雇用条件を定めた法律です。全文は、政府の電子データベースで確認が可能です。雇用主は必ず目を通すべきですが、ここでは主要項目を改正点と併せて取り上げます。

1-1.労働時間と時間外労働

休憩時間を除き、1日8時間1週40時間を法定労働時間とし、これを超えての労働を禁止しています。ただし、労使協定を結べば、残業や法定外休日での労働を認めています。この協定が36協定と呼ばれています。

36協定を結んだとしても、残業時間の上限は月45時間、年360時間としていましたが、上限値への罰則規定はありませんでした。改正法では、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則規定を追加し、規制を強化しました。また、決算対応など臨時の場合に認めている特別条項についても、単月100時間未満、2~6か月平均80時間、年間720時間と上限を定めました。

1-2.割増賃金

時間外労働には、企業規模によらず2割5分の割増賃金を支払う義務が定められています。また、月60時間以上の残業には5割の割増賃金の支払いが義務付けられていましたが、これまで中小企業は猶予を与えられていました。改正法では、中小企業も月60時間を超える残業に5割の割増賃金を支払う義務があります。

1-3.年次有給休暇

6か月以上雇用し、8割以上出勤をした従業員に対して下記の有給休暇を付与しなくてはなりません。しかし、取得までは義務づけられていませんでした。改正法では5日分は必ず取得させるように義務づけられました。

勤続勤務年数 付与日数
0.5年 10日
1.5年 11日
2.5年 12日
3.5年 14日
4.5年 16日
5.5年 18日
6.5年 20日

なお、法定の有給休暇は「付与」が義務づけられているため、企業が買取りをすることは違法となります。(【昭30.11.30 基収4718 号】参照)

1-4.フレックスタイム制と労働時間の適正管理

労使間で協定を結べば労働者が始業・終業時間を決めることができる、フレックスタイム制が認められています。その清算期間が、改正法により1か月から3か月に延長となります。

これにより、緩急をつけたより柔軟な働き方が可能となります。使用者にとっても、調整範囲が広くなることで、割増賃金の支払いが減るというメリットがあります。(ただし、各月で週平均50時間を超える労働に対しては割増賃金の支払いが義務です。)

また、働き方の柔軟性を広げること、残業時間に対する規制を厳しくすることにより、使用者が適切に労働時間を管理することも改正法にて明文化されました。

1-5.産前産後休暇の制定

産前6週間、産後8週間の女性の就業禁止や産前・産後休業の期間など、母性保護を目的とした規定もされています。労働基準法以外にも、介護・育児休業法において育児休暇の期間等が規定されていますが、この育児休暇の最大期間が昨年子が2歳までに延長されました。

少子化、労働力の減少により、育児・介護中の労働者が働きやすい環境になるように各法令の見直しがされています。

(参考)厚生労働省 「働き方改革」の実現に向けて

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

 

2.労働基準法例違反のリスクと違反事例

今回の法改正を受けて、取り締まりに今後も一層力を入れると想定されます。労働者を守る基本である労働基準法を違反すると、ブラック企業として捉えられて社会的信頼が大きく落ち、採用活動にも大きな影響を及ぼします。厚生労働省によって公表された場合には、一定期間ハローワークでの求人情報が受理されなくなります。

違反事例から、今一度自社が同じ状況になっていないか、可能性がないかを確認しましょう。

2-1.違法残業

厚生労働省は毎年、対象企業を監督指導する「過重労働解消キャンペーン」を行なっています。2017年度の結果によると、7,635事業所に重点監督を行ない、5,029事業所に違法行為への是正勧告をしました。違法行為で最も割合が高いのは、時間外労働で、半数以上が過労死ラインと呼ばれる月80時間を超える残業をさせていたことがわかっています。

長時間労働が当たり前となっている職場もあるかもしれませんが、法律違反に弁解は通用しません。その残業が強制的に行なわせたものでなかったとしても、法の範囲内に業務が収まるように調整できなかったことの管理責任が問われます。

2-2.労働時間の過少申告

2004年、九電光に勤務していた社員が過労自殺をしました。この社員の勤務表での時間外労働は月30時間でしたが、警備記録から実際には月120時間以上の時間外労働を行なっていたことが判明しました。

使用者は労働者の勤務時間を正しく把握する義務があります。過少申告していたことがわかれば、厳しく処罰されます。

2-3.残業代賃金、割増賃金の未払い

残業に対しては、割増賃金を支払う必要がありますが、あらかじめ基本給に所定の残業時間分の賃金を含めて支給する方が効率的と考える企業もあるかもしれません。

テックジャパンは時間外労働も含めた月180時間の勤務に対して41万円の基本給を支払う雇用契約をしていました。しかし、法定労働時間分の賃金と時間外労働の割増賃金の区別が不明瞭であり、適切な割増賃金を支払っていないという判決が下りました。定額の残業代を支給する場合には、通常賃金と時間外労働の割増賃金について明示する必要があります。

2-4.有給休暇取得の妨害

労働者は取得した有給休暇を使用する権利がありますが、職場によっては取りづらい空気があるかもしれません。平成24年、最高裁は有給休暇の取得を行うと評価が下がるなどの発言をし、有給休暇取得を妨害したとして日能研関西に対する損害賠償を認める判決を出しました。

正常な営業を妨げるような時期を請求された場合には、使用者は時季変更権を行使できますが、そうでない場合には、取得を許可・不許可と判断する行為は許されません。

 

3.法律に即した労働環境を提供するには

このように、労働基準法の違反には大きなリスクがあります。適切な労働環境を提供するにはどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?

3-1.勤怠の適正な管理

使用者は労働者の労働時間を客観的かつ適切に把握・管理する必要があります。勤務時間の正確な把握は、業務量が適切かどうかの判断に必要ですし、従業員の心身の健康を守ることにも繋がります。

そこで、管勤怠管理システムを利用した管理が推奨されます。とはいえ、導入システムを増やすと、特に中小企業においては運用が煩雑になりかねません。たとえば、IT企業であれば、プロジェクト管理ツールに勤怠管理機能がついているものがお勧めです。1つのシステムでプロジェクトの管理と個人の勤怠管理を行うことができるため、導入・管理の手間を省くことができます。

3-2.業務の管理と有給休暇の計画的な取得

労働時間を減らすことは難しいかもしれませんが、生産性が向上したと発表する企業は少なくありません。業務を適切に把握・管理することで、無駄や手戻りを発見し、所定労働時間内に業務が完了するようにすることは不可能ではありません。会議も多くの企業が削減しています。

有給休暇の取得率向上も重要です。取得計画をあらかじめ立てた上で、チームで共有する、半休を設けるなどで業務に支障をきたさずに取得率100%を目指すことは可能です。

4.まとめ

企業が長期的に利益をあげ、発展するには社員が能力を発揮できることが必要不可欠です。まずは、勤怠管理や業務整理、年休取得率の向上を行い、法律に即した職場環境を整えることから始めましょう。

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