アジャイル開発にガントチャートを活用する方法

アジャイル開発ではカンバンなどの管理ツールが主流です。しかし、経営層や営業部門が製品リリース時期を知りたい場合や、委託開発でプロジェクト期間が決まっている場合など、いつまでに何を開発するのかを関係者と共有しなければならない状況では、カンバン等でマイルストーンを示すのが難しいという課題があります。

このような場合、プロジェクト全体の計画を示すためにガントチャートを活用すると良いでしょう。この記事では、アジャイル開発にガントチャートを活用して予実管理・進捗管理を効率化する方法を紹介します。

1. アジャイル開発におけるガントチャートに対する評価

まず、アジャイル開発におけるガントチャートの評価を解説します。

ガントチャートは、仕様やプロセスが明確なウォーターフォール型のプロジェクトで多用されてきました。そのため、アジャイル開発にはガントチャートが適合しないという指摘がなされました。

アジャイル開発では各スプリントで柔軟に仕様変更・計画変更を行うのに対し、ガントチャートを使うとタスクレベルでの管理が煩雑になります。また、開発開始時点で、タスクレベルでの工数見積もりを高い精度で行うのが難しく、スコープと納期に対して、計画を正確に作成するのが困難という事情もあります。さらに、表計算ソフトでガントチャートを作成すると、頻繁に更新したり、複数チームでファイルを共有したりするのが難しいという課題も指摘されました。

以上の理由から、アジャイル開発では、機能の優先順位を明らかにするバックログ、進捗を可視化するカンバン、作業の進み具合を知るバーンダウンチャートなどを利用するケースが一般的でした。しかし近年では、アジャイル開発においてもガントチャートを活用するケースが増えてきています。次の章で詳しく解説します。

2. ハイブリッド型開発におけるガントチャートのメリット

ここでは、ハイブリット型開発におけるガントチャートのメリットを解説します。

前述の通り、アジャイル開発ではカンバンやバーンダウンチャートによる管理が行われています。

バックログで優先順位付けされた機能群を、各スプリントで選択し、実装していくのが前提です。しかし、現実的には完全なアジャイル開発よりも、部分的にウォーターフォール型の要素が入るプロジェクトが多いため、ガントチャートが多いに活躍するのです。メリットを具体的に紹介します。

2-1. 製品リリースの時期を共有しやすい

経営層や営業部門は、顧客や関係者と情報共有するため、製品リリースの時期を知りたいと考えています。
カンバンやバーンダウンチャートでは実装の優先順位を示すのが目的なので、いつまでに何を実装できるかが明確になりません。ガントチャートであれば、おおまかなリリース時期としてマイルストーンが一目瞭然であり、関係者との認識合わせが容易です。

2-2. 委託開発においてスケジュールを共有しやすい

日本では委託によるシステム開発が多く、近年では、委託開発でもアジャイル手法を採用する動きがあります。
プロジェクト期間と要件が決まっている委託開発の場合、要件定義はウォーターフォール型で実施し、設計・開発はアジャイル的な反復開発をおこなうハイブリッド型が適しています。委託開発の場合、プロジェクト期間の活動を事前に合意するため、ガントチャートを使って、いつまでに何の成果物を作成するのかを可視化する手法が有効です。

2-3. 小規模、短期間の開発においてもスケジュールを可視化

2、3人で短期間の開発を前提とすると、工数見積もりが高い精度で行うことが可能で、作業の手戻りが少ないため、ガントチャートでも十分に管理できます。変更が煩雑になるというガントチャートの欠点も気になるものではなくなるでしょう。加えて、担当範囲や依存関係が視覚的に理解できるので、ガントチャートの利点が活かせます。

2-4. 作業量を見える化

プロジェクト立ち上げ期で、開発者が徐々に増員されていく状況では、各スプリントで実装できる作業量(ベロシティ)が推測できないため、バーンダウンチャートよりもガントチャートが好まれる場合があります。

3. アジャイル開発においてガントチャートを活用するポイント

アジャイル開発でガントチャートを活用するには、その利点を活かし、同時に弱点を克服するような工夫が必要です。ここでは、システム開発の流れに沿って、ガントチャートを活用するポイントを紹介します。

3-1. WBSの作成

必要な作業を網羅し、その関係性を明確にできるよう、WBSを作成します。
WBSは、プロジェクト全体の作業を分解し、全ての作業をツリー上に整理する手法です。アジャイル開発においては、管理を煩雑にしないよう、粒度を細かくし過ぎないのがポイントです。タスクレベルでの管理よりも、エピック(機能群や、大枠で見た開発の取り組み)やリリース単位で区切っても良いでしょう。

3-2. マイルストーンの設定

多くの開発プロジェクトでは、おおよそのリリース目標としてマイルストーンを関係者と共有する必要があります。
マイルストーンの例としては、プロトタイプの共有、基本となるユースケースの実装、ユーザーに公開してフィードバックが得られるベータ版の完成、主要な機能のリリースといったイベントが挙げられます。その期限に合わせて、WBSで定義した各タスクの終了日を設定し、ガントチャートを作成します。

3-3. プロジェクト開始後の変更管理

プロジェクト開始後は、ガントチャートに縛られず、アジャイル開発として柔軟に作業範囲を決定して開発を進めます。
タスクレベルの管理については、開発者が自律的に優先順位をつけて作業に臨めるよう、カンバンやバックログの利用が可能です。ここでは、スケジュールや実施するタスクに変更があってもガントチャートの修正は行いません。アジャイル開発では細かい計画変更が前提なので、ガントチャートでは修正が頻繁に発生しない粒度に留めておきます。

3-4. 進捗のモニタリング

プロジェクトの遂行期間を通し、マイルストーンが守れるかどうか、進捗がスケジュール通りに進んでいるかをモニタリングします。また、投下工数の確認を行い、工数計画が超過しそうか、超過しそうであればスケジュール調整・リソース調整ができないかを検討します。

4. ツールを活用した効率的なガントチャート作成/更新

ここでは、ツールを活用した効率的なガントチャーの作成方法・更新方法を紹介します。

ガントチャートは、Excelなどでも作成できますが、Excelは以下のデメリットが発生するためお勧めできません。

4-1. Excelでのガントチャート作成/更新の限界

Excelは、表計算ソフトとして多くの企業で活用されていますが、バージョン管理の点でガントチャートの作成/更新には向いていません。

計画を変更するたびに異なるバージョンのファイルを作成すると、どのファイルが最新のガントチャートなのかを判断できなくなってしまい、進捗管理に多大な支障が発生します。また、計画や実際の工数を入力していても、数値の整合をとるのが難しく、数式やフォーマットを駆使した高度な管理が求められる点も注意点です。さらに、Excelの作りこみを続けると、作成者しかExcelファイルを編集できなくなり、管理が属人化していきます。

4-2. 近年はクラウド型のツール利用が主流

近年は、クラウド型のガントチャートツールが登場したため、低労力・スピーディにガントチャートを活用しやすくなりました。ツールを活用することで、ドラッグアンドドロップでタスクの登録・変更を行なったり、タスク同士の依存関係の設定や複数の作業をまとめたタスクグループの作成、マイルストーンを設定したりすることも容易です。

Excelよりも容易にガントチャートを作れるため、ガントチャートを作成する際はクラウド型のツール導入がお勧めです。

5. まとめ

この記事では、アジャイル開発におけるガントチャートの活用方法やメリットを紹介しました。アジャイル開発でも、マイルストーンを関係者に共有する際などにガントチャートは非常に有効です。粒度を細かくし過ぎない、計画に縛られ過ぎないといった点に留意すれば、アジャイル開発におけるガントチャートの弱点を十分克服することができます。

アジャイル開発は、ツールよりも対話や協調を重視する方法論なので、その状況に応じて最適なコミュニケーション手段を選択すると良いでしょう。

コロナ禍で急速に普及が進んだテレワークにおいても、ガントチャートはタスク管理に有効です。この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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