ペーパレス化とは?メリット・デメリットや課題、ツールなどを解説

環境負荷の低減やコスト削減の観点から、企業ではペーパレス化の取り組みが進められています。また、近年ではコロナ禍によるテレワークの普及もあり、紙媒体に頼らない業務遂行が必要とされているという背景もあります。

ペーパレス化はシンプルな取り組みではありますが、安直に紙媒体を減らすだけでは業務への影響が発生するケースもあります。そこでこの記事では、自社におけるペーパレス化推進の役に立つように、ペーパレス化のメリットやデメリット、利用できる法制度やツール、進め方とよくある課題など、ペーパレス化に必要となる様々な知識について解説を行います。

ペーパレス化とは

ペーパレス化とは、紙媒体で保管されている書類を電子化し、経費削減等の効果を得るための取り組みを指します。テレワークの普及に伴い、会社への出社が必須となってしまう紙媒体での業務を削減し、ペーパレス化を進めていく取り組みに注目が集まっています。
ペーパレス化は、紙の使用量削減による経費の節約や環境保全といった効果に加え、業務効率化にも有効です。

ペーパレス化に活用できる制度

企業内の文書においてはペーパレス化に制約はありませんが、税関係の書類など法律上で紙媒体での保管が義務付けられている書類も多く存在します。ここでは、法律上で電子媒体での保管が認められている文書について紹介します。

e-文書法

e-文書法は医療、保険、証券、建築などの様々な領域において保存義務のある文書を対象に、電子データでの保存を認める制度のことです。過去、医療のカルテや株券、保険証書などは紙媒体で交付・保管することが義務付けられていましたが、e-文書法により電子データでの保管が認められるようになりました。
自業界がe-文書法の対象となる場合、当該書類についてはペーパレス化の取り組みとして真っ先に検討すべき範囲といえるでしょう。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法は、国税関連の帳票・書類について、一定の要件を満たした場合に電子データで保存できる制度のことです。
電子帳簿保存法は古い歴史を持ちますが、電子データで保存する際に求められる要件が厳しく、これまで普及は進んでいませんでした。

しかしながら、2021年の改正(2022年1月施行開始)により要件が大幅に簡素化され、にわかに注目を集めています。折しもAI-OCRに代表されるような紙媒体の電子化技術の発展もあり、今後、決算書や領収書、請求書など国税関係書類の電子化が進んでいくと思われます。

コロナ禍・DXとペーパレス化

近年はペーパレス化への注目が高まっていますが、これにはどのような背景があるのでしょうか。もっとも大きな理由は、コロナ禍によりテレワークの実施が求められたことにより、出社しないと閲覧できない紙媒体を用いた業務が遂行困難になるケースが多発したことにあるでしょう。

業務の継続性を確保するためにも、場所を問わず書類を閲覧できるようにするペーパレス化の取り組みが求められています。
さらに、DXの普及のなかで企業内データのデジタルデータ化の取り組みが推奨されるようになり、紙媒体から機械可読可能な電子データへの移行を進める企業も増えています。デジタルデータの蓄積は企業がDXを進める上での大きな武器となるため、DX推進の観点からペーパレス化を進める企業も多いです。

ペーパレス化のメリット・デメリット

以下では、ペーパレス化のメリット・デメリットについて解説します。

ペーパレス化のメリット

ペーパレス化のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。以下では3つのメリットを取り上げます。

コスト削減

ペーパレス化の最も大きなメリットは、コスト削減にあるでしょう。ペーパレス化により、書類の印刷コスト削減、保管スペースの削減、印紙代の削減などのコスト削減効果を得ることができます。特に、印刷コストはそれなりの費用となるため、削減効果が大きいといえるでしょう。

情報の閲覧性・検索性向上

ペーパレス化により、場所を問わず書類を閲覧できるようになります。これにより、在宅勤務環境でも書類を確認できるようになります。また、検索情報を付与して電子データを保管することで、ファイリングされた紙から必要な書類を探すよりも書類の検索性が向上します。

紛失リスクの軽減

ペーパレス化した電子データは容易にバックアップすることが可能です。バックアップディスクを作成したり、クラウドバックアップを利用したりして電子データのバックアップを取得することで、書類の紛失リスクを低減させることができます。

ペーパレス化のデメリット

一方で、ペーパレス化にはデメリットも存在します。ペーパレス化のデメリットとして、以下の3点を取り上げます。

業務手順の変更が必要

ペーパレス化を行うにあたっては、既存で紙媒体をベースに設計されている業務の手順を見直す必要があり、手間となります。特に、自社内で完結する業務の場合は変更も比較的容易ですが、他社が関わるような業務手順の変更には交渉をはじめとした作業負荷が必要です。

初期投資が必要

ペーパレス化のためには、紙媒体を電子化するスキャナや、電子化の際に内容を読み取るAI-OCR等のツールを導入する必要があります。これらの導入コストが必要となることにも注意が必要です。場合により、初期投資のコストがメリットを上回ってしまうケースも想定しなければなりません。

完全なペーパレス化は困難

法律で紙媒体での保管が義務付けられている書類など、完全にペーパレス化を行うことは難しく、ファイリングなどの業務はどうしても残ってしまいます。
よって、紙媒体の保管・管理のために一定の出社が必要となり、また紙と電子データの2種類の媒体を管理しなければならないことにも留意する必要があります。

ペーパレス化の障壁になる課題とは

ペーパレス化の取り組みには、様々な課題が発生しがちです。以下では、ペーパレス化の取り組みを進める際に発生しやすい主な課題を紹介します。

心理的な抵抗感

特に長年紙に慣れ親しんだ世代を中心に、紙の便利さや手軽さなどを惜しむ声が聞かれることがあります。このようなケースにおいて、強制的にペーパレスを進めると不満が発生しやすいといえるでしょう。

社内にペーパレス化への抵抗感がある場合、影響の少ないところからペーパレス化を行うなど、段階的な取り組みを行うことで、電子媒体の便利さなどを伝えていくことをおすすめします。例えば、部署内での打ち合わせや比較的重要度の低い会議などからペーパレス化を始めていくといったことが考えられるでしょう。

ITリテラシー不足

ペーパレス化によりPCやタブレットなどから資料を閲覧することになりますが、この時に操作方法が分からないなどの理由で戸惑いが発生するケースもあります。時間の限られた会議中にこのような事態になると、会議の目的を達成することも困難となります。

このようなケースを想定して、ペーパレス化が浸透するまでは一定数紙媒体の会議資料も用意しておくなど、トラブルを発生させないこともポイントとなります。

取引先との合意

自社内で業務が完結しないケースにおいては、取引先等との合意形成が必要となります。自社内での取り組みと比較して、様々な事情を考慮しなければならない取引先とのやり取りについては、柔軟な対応が必要です。

相手先の企業文化によりペーパレス化が難しい場合は、必ずしもペーパレス化にこだわる必要もありません。相手先との関係性を考慮して紙での業務を継続することも一案となります。

ペーパレス化に活用できるツール

以下では、ペーパレス化に活用できる主なツールを紹介します。

スキャナ

紙で実施している業務をペーパレス化する際に有効なのがスキャナです。様々な理由で電子媒体での業務遂行が難しい場合も、紙媒体をスキャナでスキャンすることでペーパレス化の取り組みを進めることが可能です。

また、過去のデータをスキャンしてPC等から参照する際にもスキャナを活用することができます。
近年では、スキャン時に検索用のデータを付与することで書類を分類できる製品も登場しています。書類の検索性を高め、効率的な業務遂行を目指すうえでは有効な選択肢となります。

電子契約システム

従来は紙媒体に押印することで締結していた契約書も、電子契約システム上で双方が電子的に合意した記録を残すことで、ペーパレス化が可能です。一般的に電子契約システムは自社がライセンス料金を支払い利用していれば、他社はライセンスを必要とせず利用できるため、必ずしも双方が同じ電子契約システムを導入している必要はないというメリットがあります。

電子媒体での契約書については収入印紙が不要という点もポイントです。契約書の電子化には、印紙代の節約という効果もあります。

Web会議ツール

Web会議ツールを利用し、ツール上で資料を共有することでペーパレス化を実現することができます。
そもそもWeb会議においては紙媒体での資料共有は不可能ですが、参加者の画面に発表者のPC画面を表示したり、投票ツールを備えていたりとWeb会議ツールの様々な機能でカバーすることができます。
また、Web会議ツールの機能で会議の様子を録画することで、会議に参加していない人に情報共有を行うことも可能です。

AI-OCR

スキャナを使って文書を読み取る際に、AI-OCRを利用することで記載内容も含めて電子化が可能です。
従来のOCRは、印刷された文字など可読性の高いものは読み取ることができましたが、乱雑な手書き文字などの認識精度が低いという特徴がありました。

しかしながら、近年のAI技術の発達とともに、AI技術を活用したAI-OCRが普及するようになり、文字の読み取り精度が大幅に向上しました。これにより、手書きの申込書など適用可能な範囲が広がっています。

AI-OCRの利用は、単にペーパレス化を行うだけではなく業務効率化の観点でも有効な選択肢となります。例えば、AI-OCRで読み取った申込書情報から自動で申込者リストを作成し、申込者に受付メールを自動配信するようなことも可能となります。

オンラインストレージ

オンラインストレージを利用し電子化された資料を保管することで、任意の場所から資料にアクセスすることが可能となります。これにより、テレワーク環境においても会社にいるとの同様に資料を参照できるようになります。
オンラインストレージ製品によっては検索機能も備えているため、紙媒体と比較して資料を探す速度も向上するというメリットもあります。

ペーパレス化の実現手順

最後に、ペーパレス化の実施手順について紹介します。

ペーパレス化への合意形成

最も大切なのは、社内や関係先とペーパレス化について合意を形成することです。
ペーパレス化の取り組みはルールを作ればうまくいくものではなく、関係者に協力してもらわなければ実現できません。
合意が得られていなければ、次第に紙での運用に逆戻りしてしまうケースもあります。
ペーパレス化の実効性を高める上でも、ペーパレス化への合意形成を行っていく取り組みは重要です。

対象の整理

次に、ペーパレス化できる資料を洗い出し、ペーパレス化の対象を整理します。上述の通り、必ずしもすべての資料がペーパレス化できるとは限りません。
紙での運用が効率的なケースも存在します。
また、一度にペーパレス化を進めるのではなく、取り組みやすいところから段階的にペーパレス化を実施していく進め方もおすすめできます。

ペーパレス化しやすい対象としては、打ち合わせ資料や社内申請書類などが挙げられます。また、e-文章法や電子帳簿保存法にて電子データ化が認められている書類も候補となるでしょう。

ルールの整備

ペーパレス化の対象を整理したら、ルールとして電子化する範囲や例外的に紙媒体を利用できるケースなどを定めます
ペーパレス化において必ずしも厳格なルールを定める必要はありませんが、一定の指針があったほうが従業員も判断しやすくなり、取り組みも進みやすいといえます。

また、プリンターの機能として実績集計機能を備えている場合は、印刷数の目標を立てたうえで、一定期間で実績を確認して達成状況をチェックする取り組みも有効となります。特に、自社がCSRの取り組みやEMSの導入を行っている場合、このような印刷数のチェックと報告は有効です。

ツールの導入

さらに、ペーパレス化する範囲に応じて、スキャナや電子契約システムなど、上述したツールの導入を検討するとよいでしょう。もちろん、単純にプリンターの印刷数を削減する取り組みを行うことも有効ですが、ツールを活用することでより効率的な業務遂行を実現できます。

特に企業規模が大きい場合、一度に全部署にツールを導入することは業務変更による混乱の発生が懸念されます。一部の部署のみで先行的に試験導入して課題を抽出するなど、段階的に利用範囲を拡大していくスモールスタートの取り組みが有効となります。

既存書類のペーパレス化

また、ペーパレス化のルール整備と合わせて、保管義務がある既存書類について、スキャナを利用してペーパレス化するとよいでしょう。特に、国税関係の領収書、請求書、注文書などは膨大な数となりがちであり、これらをスキャナでペーパレス化することにはメリットが多いです。

既存書類をペーパレス化することで、書類の保管コストを下げる効果のほか、一部のみ電子化されていることで検索性が下がってしまう事態を避けることもできます。

まとめ

この記事では、ペーパレス化推進の役に立つ情報として、ペーパレス化のメリットやデメリット、利用できる法制度やツール、進め方とよくある課題など、ペーパレス化に必要となる様々な内容を解説しました。

コロナ禍によるテレワークの普及もあり、ペーパレス化の取り組みは企業の喫緊の課題となっています。まだ自社内に紙を利用した業務が残っている場合は、積極的にペーパレスの取り組みを進めていくことをおすすめします。

 

 

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