活動基準原価計算(ABC)とは?計算方法や事例を紹介

利益を正確に算出し、事業ごとの採算を知るために原価管理はどのような業種でも重要な管理項目です。「活動基準原価計算」は、伝統的原価計算と比べ、より正確に原価計算を行うための原価計算手法です。では伝統的原価計算と呼ばれる通常の原価計算と何が違うのでしょうか。ここでは活動基準原価計算とは何か、計算方法やメリット、デメリット、原価計算をより効率化に行うための方法について解説していきます。

活動基準原価計算(ABC)とは?

活動基準原価計算とは、Activity Based Costingの頭文字を取り「ABC」とも言われます。
製造業における伝統的原価計算では、製品との関係が不明確な間接費を各製品の直接費に割り当てる手法を取っていますが、この手法では、本来配分されるべきではない間接費が製品の原価に計上されてしまうという課題があります。
活動基準原価計算(ABC)は、この課題を解消し、より正確な原価計算を行うための手法として1980年代後半にCooperとKaplanによって提唱された原価計算技法です。「製品が活動を消費し、活動が資源を消費する」という基本理念のもと、間接費を活動単位に分割して原価計算を行います。
ただし、棚卸資産や製造原価など、財務諸表に計上するものは伝統的原価計算しか認められていません。

  • 伝統的原価計算の原価計算手続き
    費目別計算→部門別計算→製品別計算
  • 活動基準原価計算(ABC)の原価計算手続き
    費目別計算→活動別計算→製品別計算

これだけでは理解しにくいため、事項の事例でわかりやすく解説していきます。

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活動基準原価計算(ABC)の適用業種と事例

活動基準原価計算(ABC)の適用業種

活動基準原価計算(ABC)は主に製造業で利用されていますが、銀行や、行政サービスに適用された事例もあります。

活動基準原価計算(ABC)の適用事例

ここでは、公共図書館のコスト分析に活動基準原価計算(ABC)が適用された事例を紹介します。「製品が活動を消費し、活動が資源を消費する」という基本理念がわかりやすい事例です。

「図書館で本を読むと税金が277 円掛かる!」
まず、図書館へ行って本を読むと、それだけで277 円の税金が費やされる。お目当ての本をどこにあるかとたずねると、その分人件費などが掛かり、1 件につき913 円。
もっと複雑な相談をすると、調べる時間が増えるため1 件5,319 円。うっかり返却日を過ぎて督促を受けたら、そのための作業や電話・はがき代などで1 件当たり1,844 円。
講演会や映画界などの図書館の催しに参加すると、一人当たり1 万4,912 円の税金が掛かる計算になったという。(朝日新聞、平成12 年9 月16 日)

(引用:活動基準原価計算の公的部門への導入について)

現在はIT化によりコスト削減が行われていると考えられますが、この事例は、活動基準原価計算(ABC)の特徴が理解しやすい具体例です。

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活動基準原価計算(ABC)の計算方法

製品A,Bを例に計算例を解説します。

伝統的原価計算の計算例

製品A 製品B 合計
直接作業時間 200時間 100時間 300時間

このときの製品A、Bの間接費が30万円だったとしましょう。

伝統的原価計算の場合、原価計算は下記のようになります。

  • 製品A:30万円×200時間÷300時間 = 20万円
  • 製品B:30万円×100時間÷300時間 = 10万円

活動基準原価計算(ABC)の計算例

間接費 直接作業時間
製品A 製品B
活動1 10万円 50時間 10時間
活動2 20万円 150時間 90時間

活動基準原価計算(ABC)では、活動1、2のように製造に関わる活動を細分化し、下記のように計算します。

製品A

  • 活動1:10万円×50時間÷60時間 = 8.3万円
  • 活動2:20万円×150時間÷240時間 = 12.5万円
  • 合計:20.8万円

製品B

  • 活動1:10万円×10時間÷60時間 = 1.7万円
  • 活動2:20万円×90時間÷240時間 = 7.5万円
  • 合計:9.2万円

このように、活動ごとに原価を計算することで、製品A、Bの原価を厳密に計算することができます。

活動基準原価計算(ABC)のメリット、デメリット

活動基準原価計算(ABC)には、より正確な原価が計算できるという大きなメリットがあるものの、デメリットもあるため、認識した上で導入する必要があります。

メリット

活動基準原価計算(ABC)のメリットとして、下記が挙げられます。

メリット1.より正確な原価を算出できる

前項の計算例のように、正確な原価計算が行えると、より適正な価格設定ができたり、利益率の高い製品を明確にできたりなど、事業の推進に役立てることができます。

メリット2.事業に貢献していない価値のない活動が明らかになる

活動基準原価計算(ABC)では、活動単位での原価が明らかになるため、収益と活動を比較することで、今まで見えなかった不採算製品や事業、削減できるものや業務改善に繋げる対象が見えやすくなります。

デメリット

活動基準原価計算(ABC)のデメリットとして、下記が挙げられます。

デメリット1.データの蓄積・整理に時間がかかる

活動単位にデータを蓄積するには、各工程にかかった時間や作業の頻度を知る必要があるため、それらを記録する現場の従業員に負担がかかることになります。

デメリット2.経営判断の材料とするにはリスクがある

活動基準原価計算(ABC)は、あくまで伝統的原価計算と比較して正確な原価が求められるという計算方法です。間接費はそもそも流動的なものも多いため、データを過信して経営判断のような重要な判断に用いるにはリスクが高いと言えます。

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改良型の活動基準原価計算(TDABC)の登場

活動基準原価計算(ABC)は、欧米企業では積極的に導入が進んだと言われていますが、日本では欧米ほど積極的には導入されなかったと言われています。また、活動基準原価計(ABC)は評価が下がりつつあり、欧米企業では一度導入したものの、利用をやめる企業が増加しています。
それは、前項に挙げたデメリットのようなことも原因のひとつとして考えられます。
そこで従来の活動基準原価計を見直し、計算手続きを修正したTDABC(Time-Driven Activity-Based Costing:時間主導型活動基準原価計算)という改良型の活動基準原価計が登場しています。
活動基準原価計(ABC)に不足や課題を感じている場合、TDABCの適用を検討しても良いでしょう。

参考:活動基準原価計算の発展に関する一考察

活動基準原価計算(ABC)を効率的に行うには?

活動基準原価計算(ABC)は、より正確な原価計算を行うためのものですが、正確かつ効率的に原価計算を行うにはクラウドログなどの工数管理ツールの導入がおすすめです。
活動基準原価計算(ABC)の特徴である「活動」を記録するという記録作業も、プロジェクトや製品ごとに簡単に入力することが可能です。クラウドログは工数管理に留まらず、スケジュール管理や予実管理、日報の登録、データの分析まで行えます。
工数管理ツールを利用することで、データの登録が効率化され、社内でのデータ共有や過去データの参照もしやすいというメリットがあります。

まとめ

活動基準原価計算(ABC)を取り入れることで正確な原価計算が行なえますが、反面、データの入力・管理に時間がかかるというデメリットがありました。しかし、クラウドログのような工数管理ツールを利用することで、デメリットも大幅に解消されます。
現在の原価計算方法に課題や問題を抱えている場合は、活動基準原価計算方法(ABC)の採用と、あわせてクラウドログの導入を検討してみては如何でしょうか。

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