工数とは?管理・計算方法とスケジュール反映のポイントを解説

工数は見積もりを行う際にも、プロジェクトを運営する際にも欠かせない概念です。また、工数管理は事業を成長させるためにも欠かせない管理項目のひとつであるため、正しく理解し、扱うことが重要だと言えます。ここでは、プロジェクトマネージャーやリーダーとして知っておくべき工数の基礎知識に加え、見積もりやプロジェクト計画、プロジェクト運営に活かすための工数算出方法やスケジュールへの反映方法について解説していきます。

目次

工数とは?

工数とは、ある作業を完了させるために必要となる時間のことを言います。プロジェクトの見積もりの根拠にする数字でもあり人時、人日、人月という単位で表されます。

・人時(にんじ):1人が1時間で完了できる作業量
・人日(にんにち):1人が1日で完了できる作業量
・人月(にんげつ):1人が1か月で完了できる作業量

工数は以下の計算式で計算します。

工数=作業時間×作業人数
人日を出す場合、工数÷8(時間)
人月を出す場合、工数÷8(時間)÷20(日) で計算することができます。

工数はどのような用途で使われるのか

計算した工数はどのように扱われるのか、なぜ工数が重要なのかを確認していきましょう。

工数の用途

一般的に、工数は下記のような用途に利用されます。

用途1:見積もり

一番の用途は見積もりでしょう。プロジェクトに対する作業時間と作業人数を計算し、費用算出の根拠にします。

用途2:プロジェクトのスケジュール作成、プロジェクト管理

工数を基に、要望されるスケジュールと稼働する人員を当てはめ、いつどのような工程で進めるのか、具体的なスケジュールの作成に利用します。ここで作成したスケジュールをベースに、更に細分化しタスクに落とし込み、プロジェクト管理を行います。

用途3:予実管理

プロジェクトが開始されると、見積工数に対し、実際にかかった作業時間実績を記録することで予実管理を行うことができます。予実管理は生産性の確認や予算の管理に繋がる大事な管理項目のひとつです。

用途4:業務改善

用途3の予実管理ができていると、前述の通り生産性が明らかになります。見積工数との差分が大きい場合、なぜ発生したのかという原因究明と、改善のための対策を行うことで見積精度を上げたり、効率的に作業を行うよう業務改善を実施したりすることで工数削減が期待できます。

用途5:要員計画

工数を算出しスケジュールと照らし合わせると、いつどのタイミングでどのような人員が必要になるかが分かるため要員計画を立てやすくなります。

用途6:事業計画

用途5の要員計画にも関連しますが、自社の進める事業計画(方向性)とプロジェクトの内容から、自社に足りていない技術や強み・弱みを見定め事業計画に反映していくことができます。

工数の重要性

前述の通り、工数は様々な用途で活用されることからもその重要度が伺えるでしょう。工数を算出し管理することを「工数管理」と言い、企業の事業を成長させる上でも、プロジェクト管理をする上でも重要な管理項目のひとつです。見積に始まり、プロジェクトのスケジュール管理、進行、予算管理などプロジェクト推進の基点となる重要な数字です。
工数管理について更に詳しく知りたい方は是非下記記事もご覧ください。

関連記事:工数管理を徹底解説!目的や重要性、簡単な始め方から分析方法まで
工数管理を徹底解説!目的や重要性、簡単な始め方から分析方法まで

工数管理のメリット

工数管理を行うことで、さまざまなメリットを享受できます。当セクションでは、工数管理における3つのメリットをご紹介します。

メリット1:進捗管理の正確化

工数管理の実施によって、進捗管理の精度向上が可能です。プロジェクトの予定工数を管理すれば、各タスクの作業負荷を見積もることができ、人員配置に役立ちます。

また、実績工数を管理し、予定工数と比較することで、プロジェクトの進捗管理を正確に行えるメリットもあります。

メリット2:スケジュール調整の精度向上

工数管理データは、スケジュール調整の精度向上にも役立ちます。予定・実績工数を管理することで、プロジェクトの遅延を迅速に検知できます。
遅延が発生している場合、担当者へ遅延理由を確認し、必要であれば人員の再配置や追加投入などの対処が可能です。

メリット3:作業時間の見積もり精度向上

工数管理を行い、実績工数のデータを蓄積することで、社員がどの業務にどの程度の時間をかけているかを把握できるようになります。

プロジェクト計画のスケジュール作成時や、各タスクに必要な時間の見積もり時に、過去の実績工数のデータを参考にできるため、予定工数の見積もり精度が向上します。

工数の計算方法

工数の計算は「人時・人日・人月」の単位を用いて行います。それぞれの単位を用いた計算方法について、詳しく解説します。

「人時(にんじ)」での計算方法

人時(にんじ)とは、1人が作業完了に「1時間」を要する作業量です。

例えば、以下のような場合、6人時と表せます。

  • 1人で6時間
  • 2人で3時間

「人日(にんにち)」での計算方法

人日(にんにち)とは、1人が作業完了に「1日」を要する作業量です。

基本的に1日8時間として計算するため、6人日の場合、「6人 × 8時間 = 48時間」を要する作業量を指します。

例えば、以下のような場合、6人日と表せます。

  • 1人で6日
  • 2人で3日

「人月(にんげつ)」での計算方法

人月(にんげつ)とは、1人が作業完了に「1か月」を要する作業量です。

基本的に1か月20日として計算するため、6人月の場合、「6人 × 20日 = 120日」を要する作業量を指します。

例えば、以下のような場合、6人月と表せます。

  • 1人で6ヶ月
  • 2人で3か月

工数を計算する際に気をつけるべき7つのポイント

プロジェクトリーダーになったとき、工数を扱う最初のタイミングは見積作業が殆どでしょう。その工数算出ですが、先に解説した単純な掛け算では見積もりとして不十分であったり、工数計算の際に抜け漏れが発生したりすることがあります。
ここでは工数を計算する際に気をつけるべきポイントを解説します。工数を計算する=見積もりでもあるため、ここでの解説は見積もりのポイントとも共通していると言えます。

ポイント1:スキル差を考慮する

チームには新人もいれば、中堅、熟練もいることでしょう。ひとつの作業を一律に同じ時間で終えられるわけではないため、ある程度スキル差も考慮した工数の計算が必要です。

ポイント2:手を動かす以外の時間も考慮する

打合せのための移動、顧客との定例、チームの定例、調査、環境構築、プロジェクトに関わる雑務など、積み重なると大きくなるため、大きいプロジェクト程工数に入れておかなければ利益を減らしてしまう結果になります。

ポイント3:8時間ちょうどで計算しない

作業時間は通常1日8時間ですが、8時間フルで稼働しているでしょうか?休憩時間もあれば、タスクのスイッチングコストもあり、工数に現れない時間が存在します。そのため、余裕をもった計算にしておくことがポイントです。

ポイント4:過去のプロジェクトの工数を参考にする

チームや会社の得手不得手、過去のプロジェクトで工数を割いた開発内容などを参考にしておくことで工数計算の精度を高めることができます。

ポイント5:バッファを入れておく

工数を「作業を終えるために必要な時間」だけで考えた時、増員などの際にかかる時間や、思わぬ退職、病欠などに対する工数の考慮が抜け、全体に影響してしまうことがあります。工数は適度なバッファを持って算出しておくと良いでしょう。

ポイント6:レビューを行う

一人で考えた工数では考慮の抜け漏れ、過不足が発生することがあります。多少時間をとって、工数算出の根拠などをレビューすることで計算した工数の信頼度を増すことができます。

ポイント7:定期的に見直す

最初に算出した工数を最後まで変えない場合、適切なプロジェクト運営にならないことがあります。定期的に見直し、特に、増加しそうな工数については早めにキャッチし、対策を取ります。

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工数をプロジェクトスケジュールに落とし込む際の4つのポイント

プロジェクトリーダーは工数をもとにスケジュールを組み立てることが殆どでしょう。例えば、計算した工数が12人月で、チームが3名だから12÷3で4ヶ月というスケジュールを引いていないでしょうか?スケジュールに落とし込む際は単純に工数をカレンダーに割り当てればよいというものではないため、スケジュールを作成する際に気をつけるべきポイントを抑えておきましょう。

ポイント1:大型連休、連休、祝祭日などのカレンダーを意識する

プロジェクトのスケジュールによっては正月、ゴールデンウィーク、夏季休暇などをまたぐこともあるでしょう。大人数が関わるプロジェクト程、1日稼働できない影響は大きくなります。カレンダーを確認し、休暇も考慮に入れて工数を当てはめます。オフショアなど、海外が関わるプロジェクトの場合はカレンダーが異なるためオフショア先のカレンダーを必ず確認しておく必要があります。

ポイント2:先行タスク、クリティカルパスを考慮する

クリティカルパスとは先行タスクが終わらないと次のタスクに進めない、次の工程に進めないということを言います。工数だけを見たとき、人の空き状況などからスケジュールに入れることができても、実際は着手できないという状況が発生することがあります。

ポイント3:重要度が高い作業、リスクがありそうな作業を見極める

工数の大きな作業や重要な作業、技術課題があるものなどを見極めておきます。これによりプロジェクトマネージャもチームもその作業に留意し、万が一の対策を立てておくなどリスク回避の対策を考慮したスケジュールにすることができます。

ポイント4:バッファを持つ

最も重要なポイントと言えます。バッファを取りすぎるのは良くありませんが、例えばリリーススケジュールの短縮要求に応えるために、カレンダーに工数を強引に当てはめ、土日も稼働するような非現実的なスケジュールを作ってしまうことがあります。これはプロジェクトの成功率を大きく下げることになるため、適度なバッファを持ち、現実的なスケジュールに落とし込みましょう。

工数管理の注意点

工数管理を実施する際は、時間をかけすぎないほか、工数管理が目的とならないようにすることが大切です。それぞれの注意点を解説します。

工数管理に時間をかけすぎない

工数管理では、プロジェクト管理者はもちろん、作業者も工数入力を行うため労力が必要です。エクセルなどのツールを用いて、工程名から作業時間までをすべて手入力で行うと、入力者の負担は非常に大きくなります。

工数入力や管理に時間を取られると、作業効率やモチベーションの低下を招くため、事前にフォーマットを作成したり、専用の工数管理ツールで行ったりする工夫が必要です。

工数の管理がゴールではない

工数管理は、あくまで業務効率化の手段にすぎません。管理した工数データを改善活動に活用して、初めて効果を発揮します。

例えば、プロジェクトの一部のタスクで遅延が発生した場合、プロジェクト完了時に遅延したタスクの予定工数と実績工数を比較して「なぜ遅延が発生したか」「どのような改善策があるか」などの話し合いが必要です。

【業界別】工数管理の事例

ここからは、業界別に工数管理の事例をご紹介します。各業界の工数管理事例について確認し、工数管理への理解やイメージを深めましょう。

IT業界における工数管理

IT業界では、システムの開発や導入プロジェクトで工数管理が活用されます。要件定義や設計工程はもちろん、プログラミング工程では画面・機能単位で必要工数を算出し、スケジュールを作成します。

また、プログラミングの習熟度によって、担当者の作業スピードが異なることを考慮し、予定工数を算出するなどの工夫も必要です。

請負型開発の場合、プロジェクト別やメンバー別の工数がそのまま受注金額や請求金額の基準となるケースが多いため、工数管理は必須と言えます。

製造業界における工数管理

製造業界では、その日の生産予定から予定工数を算出し、各ラインに最適な人数を配置する必要があります。

特に製造業界では、1分1秒の遅延が大きな損失につながるケースがあります。機械トラブルなどで遅延が発生した際に、製造ラインの変更や追加の人員投入・再配置など、迅速にフォローできる体制を整えておかなければなりません。                                              

工数管理の失敗事例

工数管理の手法や方針の誤りにより、工数管理が失敗してしまった事例をご紹介します。

工数入力の負担が大きいケース

一つ目は、エクセルを用いた工数管理によって工数入力の負担が大きくなり、生産性・モチベーションが低下したケースです。

作業内容の詳細や実施時間について、一から細かくエクセルなどへ記入する方式では、工数入力に多大なリソースを要します。

工数管理で業務効率化を図る予定が、作業者のモチベーションダウンにより、逆に作業効率が低下する恐れがあります。

このような失敗を防ぐためには、工数入力にかかる時間の削減が必要不可欠です。工数管理ツールを導入し、入力の負担を軽減することが推奨されます。

工数管理に意味がないと感じるケース

本来行うべき作業に加え、工数入力に時間を取られることや、工数管理が社内で評価されないことから、工数管理に意味がないと感じてしまうケースもあります。

このようなジレンマを解決するためには、工数管理の目的を改めて確認したり、工数管理業務の効率化を図ったりすることが重要です。

また、工数やプロジェクトの分析を行い、メンバー間で共有することや、業務改善に活用することで工数管理の意義を感じられるでしょう。

詳細については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:工数管理は意味がないと感じる理由や業務におけるジレンマの解消法とは

工数管理の成功事例

最後に、クラウドログを用いて工数管理に成功した事例をご紹介します。

KDDI株式会社では、クラウドログの導入前はエクセルのマクロによる工数管理を行っていました。しかし、手間と時間がかかることや、データの入力精度が低くデータを活用できないことが課題でした。

そこで、使いやすさ・UI(ユーザーインターフェース)や、発行できるアカウント数と料金体系に魅力を感じ、クラウドログを導入。これにより、毎日かかっていた1時間の工数管理作業が5分に短縮でき、工数管理業務の大幅な効率化を実現しました。さらに、工数管理の正確性が向上し、業務の実態が明らかとなったことで、さまざまな改善活動にデータを活用できるようになりました。

当事例の詳細については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:毎日1時間かかっていたデータ集計の作業が5分に短縮!グループ企業の成長をささえるシェアード部門が、クラウドログ導入で得た成果とは

工数を効率的に管理・運用するには工数管理ツールが最適

時間をかけて計算した工数は、プロジェクト運営に最大限に活かしましょう。工数は工数管理としてプロジェクトの進捗管理、予実管理、生産性の向上や業務改善に利用することができます。

工数管理の方法は、エクセルなどのスプレッドシートで行うことも可能ではありますが、効率が悪く、管理自体に工数がかかるため現実的ではありません。工数管理を効率的に行うにはクラウドログのような工数管理ツールやプロジェクト管理ツールを利用することで、工数管理自体の効率化や工数削減にも繋がります。

工数管理ツールを詳しく知りたい方は、下記記事も参考にしながらプロジェクトの状況にあったツールを選択すると良いでしょう。

関連記事:【2023年版】工数管理ツール17選を比較表でチェック|選定と導入のポイントも解説
関連記事:工数管理スマホアプリの機能や利用メリットとは?代表的なアプリや機能を解説

まとめ

ここでは工数の計算方法や計算の際のポイント、運用方法を解説してきました。プロジェクトを推進する上で工数管理は欠かせないもののひとつです。プロジェクトを成功に導くためにも適切に管理していくことが重要です。
クラウドログは工数管理ツールとして機能が充実しており、スケジュール作成や勤怠管理、見やすい分析機能も利用できるためプロジェクトの状況を多角的に確認し状況を把握することができる便利なツールです。
無料の試用期間もあるため、ご自身のプロジェクトに合うものかどうかを気軽に試して頂くことができますので是非ご利用ください。

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