プロセスマイニングとは?メリットやデメリット、活用事例を解説|7つのツールも紹介

昨今のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の潮流に合わせ、プロセスマイニングに注目が集まっています。プロセスマイニングは、2000年ごろから学術研究が始まり、ビジネスでの適用が始まったのは2010年ごろという比較的新しい手法です。欧米では、プロセスマイニングの導入と活用が進んでいます。この流れを受け、日本でも導入する企業が増えています。ここでは、プロセスマイングとは何か、プロセスマイニングが注目を集めている背景、メリット・デメリットの解説、市場シェアの高いプロセスマイニングツールの紹介を行います。

 プロセスマイニングとは

プロセスマイニング (Process Mining) とは、企業内の業務のログを収集・分析(イベントログを可視化)し、課題となる箇所の特定を行い可視化するもので、業務改善や生産性の向上に活用するための分析手法です。

イベントログの可視化とは

多くの企業ではデジタル化が進んでいるため、業務に使用するグループウェアやソフトウェアなどで操作した内容はログとして取得することが可能です。イベントログの可視化とは、これらのログを収集し、操作ログをイベントとして分析し、「プロセスモデル」としてフローチャートのような形で可視化することをいいます。

プロセスマイニング技術の3本柱

プロセスマイニングはデータマイニングの一種ともいえますが、データマイニングにはない固有の展開も存在します。多くの場合、プロセスマイニングは下記3つの活動に分類されます。

プロセス発見 (process discovery)

「プロセス発見」はイベントログを入力として,実際の業務プロセスを発見し、プロセスモデルを出力します。往々にして想定しているプロセスではない手順で業務が実施されていることがあり、そのイレギュラーな手順の発見も課題として業務改善の対象になります。

適合性評価 (conformance check)

「適合性評価(適合性検査)」は、プロセスモデルとイベントログを入力として両者を比較し、ログに記録されている現実とモデルが合致するか両者の適合性を判定します。プロセスモデルのいかなるトレースもイベントログと一致しないのであれば、適合性がないことになります。

強化 (enhancement)

「強化」は、プロセスモデルとイベントログを入力として、より適合性の高いモデルを出力する技術で、改善ポイントを具体化します。強化をもとに、現在の業務モデルの変更や拡張を行います。例えば、タイムスタンプの観点でみた場合、業務のボトルネックや頻度、スループットやサービスレベルを表示するモデルに変更し、拡張することができます。

参考:プロセスマイニング・サーベイ(第01回: 概要と基本概念)
参考:IEEE プロセスマイニングマニフェスト

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プロセスマイニングで発見できる課題

プロセスマイニングでは具体的にどのような課題を発見できるのでしょうか。代表例を解説します。

例外処理・ルール違反

本来行うべき業務手順やルールが守られなくなり、現場の判断で処理を簡略化したり、スケジュールの都合や顧客都合に合わせるため例外的な措置をしたりなどの例外処理やルール違反が行われている場合、プロセスマイニングで明らかになることがあります。

業務プロセスのブラックボックス箇所の可視化

担当者が一人しかいないような業務や、手順書のない業務など、担当者しかわからない、又は個々のやり方になっているような業務プロセスが可視化されます。

繰り返し行われる単純作業や非効率箇所の発見

定期的に行われる決まった作業や、人力で行っているものの手順が決まっている定形作業などのように、人がやらなくても良い作業、又は外注できる作業、無駄な作業を発見することができます。

ボトルネックの発見

業務の中で常に待ちが発生し、ボトルネックとなっているような箇所を発見することができます。普段、なんとなく感じているような「人」起因のボトルネックや、処理フロー起因のボトルネックが具体的な数値根拠をもって明らかになります。

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プロセスマイニングが注目されている理由

プロセスマイニングは海外の大手企業で多く導入され、業務の課題解決や生産性向上に活用されていますが、なぜプロセスマイニングに注目が集まっているのでしょうか。
ここではプロセスマイニングが注目されている理由を解説します。

現状把握と業務改善の困難さ

業務改善の最初のプロセスとして現状把握があります。しかし現状を把握するには、各担当者へのヒアリングなどにより行われることが多く、コストも期間もかかるうえ、正確さに欠けるという課題がありました。
プロセスマイニングではログから分析を行うため、これらの課題を解消することができます。

人材不足

IT人材の不足は今後も続くことが予想されているため、業務効率化はすぐにでも取り組むべき課題のひとつです。業務効率化自体も効率的に行う必要があります。

DXを推進するうえで課題を持つ企業が多い

多くの企業がDXに着手し、推進しているものの課題を抱えている企業が多いことが理由のひとつとしてあります。
DX推進の課題とは、DXの本来の定義である下記「新しい製品やサービス、価値を創出する」ということに至っておらず、ただの作業効率化にとどまっているという状態が発生しています。

DXの定義
『企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること』

引用:総務省「デジタル・トランスフォーメーションの定義

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入

RPAの導入には現状の業務プロセスを知る必要があります。現状の業務プロセスを知ることや、どのプロセスをRPAの対象とするかなどは、プロセスマイニングを行いRPAの導入を進めることが効率的です。そのためRPAの導入を検討している企業にとってプロセスマイニングは合わせて検討されるツールです。

イベントデータ収集の容易性

ひと昔前は、ログを収集するにも、対象業務がデジタル化されていないということがありましたが、現在は殆どの企業で業務活動にソフトウェアを使用しています。このようにデジタルが浸透したことで分析に使用するためのイベントデータの収集が容易となった結果、プロセスマイニングという手法に注目が集まっています。

プロセスマイニング導入のメリット・デメリット

ここでは、プロセスマイニング導入のメリット、デメリットを解説します。

メリット

プロセスマイニング導入のメリットには下記のようなものがあります。

メリット1:生産性向上

プロセスマイニングで得た改善箇所に対応することで、生産性の向上を期待できます。

メリット2:コスト削減

発見した反復作業のRPA化や無駄な作業を無くすことなどにより中長期的にはコスト削減が期待できます。

メリット3:プロセスの標準化

プロセスマイニングで明らかになった例外処理やルール違反を発見することで業務の標準化を行うことができます。また、プロセスの標準化は、場合によっては法令遵守にも貢献します。

メリット4:顧客満足度、サービス品質の向上

無駄な作業やボトルネック解消により、リードタイムの短縮が行えたり、作業を標準化したり、自動化などにより業務品質が向上し、顧客満足度の向上を得られるというメリットがあります

メリット5:データ主動の意思決定を可能にする

プロセスマイニングでは、イベントログをもとに様々な数値やプロセスが明らかになるため根拠を持った意思決定や経営判断が可能になります。

メリット6:働き方改革

業務の効率化が図られる結果、従業員にかかる負荷の減少や、心理的負担の減少、残業の減少が期待でき、働き方改革にも繋がります。

デメリット

プロセスマイニング導入のデメリットには下記のようなものがあります。

デメリット1:即効性のあるものではない

プロセスマイニングで発見できた課題のうち、中には短期間で効果が見られるものもありますが、殆どの場合、改善や効果を得るには時間がかかるものです。そのため、経営や生産性向上に対し、即効性は期待できないでしょう。

デメリット2:中長期的な取り組みが必要

プロセスマイニングの導入は、ツールの選定に始まり、導入したあとはデータ連携、プロセス発見、適合性検査、強化、監視というステップが必要です。デメリット1にあるように即効性のあるものではないため、中長期的な取り組みとして継続的に行う必要があります。

デメリット3:プロセスマイニングツールにかかるコスト

プロセスマイニングツールは無料のツールも存在しますが、有料のものが多く費用も高価です。

デメリット4:データ連携にかかる工数、コスト

プロセスマイニングツールの導入、運用にはデータ定義などの処理に人員を割く必要があります。一度実施して終わりというものではないため、長期的に工数がかかります。プロセスマイニングの効果を最大限に享受するためには、専門の人員と時間を確保し、運用していく必要があるでしょう。

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プロセスマイニングツール7選

ここでは、世界的な市場シェアとインパクトの大きい企業のプロセスマイニングツールを紹介します。

No 製品名 実績・その他 機能・特徴
1 celionis ドイツ 市場シェアNo1。市場の60%以上のシェア。日本では日立システムズやTDK、海外ではUberやSiemensで導入されている。 プロセスマイニングの基本機能、タスクマイニング機能、タスクの自動化やイベント通知、機械学習などの機能、各システムとの連携コネクタやテンプレートなどがある。
2 UiPath オランダ 2019年10月 、最も多くの投資家の資金を調達したRPA企業でProcessGoldを買収し、プロセスマイニング市場に参入。プロセスマイニングとRPAの両方の機能を統合した最初のベンダー。 プロセスマイニングとRPAを併せ持ち、発見、開発、管理、実行、協働、統制と分類された一連の機能、タスクの文書化、AIによるタスク分析、自動化のためのローコードツールなどがある。
3 Software AG ドイツ 70か国に300を超える導入実績がある。自動化関連のソリューションについては、RPA企業のKryonと提携するなどで機能が強化されている。 プロセスマイニングの基本機能、プロセスのKPI分析とKPIに影響しているパターンの特定、シナリオシミュレーションなどがある。
4 myinvenio アメリカ 欧州の大手企業をはじめ、600社以上の導入企業の実績がある。イタリアの企業だが2021年4月IBMにより買収。 プロセスマイニングの基本機能、KPI設定、プロセスアニメーション、プロセスと人物の相関図、データ統合、プロセスパターン比較などがある。
5 Signavio ドイツ SAPやDHLなど、世界中で1300を超える組織、100万人を超えるユーザーに利用されている。 プロセスマイニングの基本機能、ベストプラクティス評価、プロセスシミュレーション、行動提示機能、各システムとの連携コネクタなどがある。
6 ABBYY Timeline アメリカ 5000社以上の企業が使用。その中にはフォーチュン500にランク付けされている企業も多数名を連ねている。 タスクマイニング、業務プロセスと作業プロセスの視点で分析可能。その他モニタリング、アラート機能、予測機能などがある。
7 Apromore オーストラリア メルボルン大学で開発されたオープンソースツール。無料で利用できる。オーストラリアやヨーロッパを中心に幅広い業種で実績があり、日本では書籍も販売されている。 無料でありながら、プロセスマイニングの基本機能は十分に備えている。手戻り頻度・パフォーマンス測定などの特定パターンでの絞り込み機能、予測プロセス監視などがある。
書籍:オープンソースではじめるプロセスマイニング Apromore完全ガイド

(※2022年6月現在)

参考:Analysis of Process Mining Market & Leading Vendors of 2022

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分析結果の活用事例

プロセスマイニングで発見した課題はどのように活用できるのでしょうか。ここでは分析結果の活用事例について解説します。

BPM(ビジネスプロセスマネジメント)に活用する

プロセスマイニングは、プロセスの可視化に加え、より効率の良いプロセスを出力する機能があるため、BPMの推進に活用できます。

関連記事:BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とは?進め方やBPMツールの具体例を解説

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に活用する

RPAを導入する際、どこを自動化するのか、業務の現状分析は欠かせません。プロセスマイニングで正確な分析を行うことで効果的な箇所を自動化することができます。

DTO(組織のデジタルツイン)で確実性を増す

プロセスマイニングの分析により改善点が明らかになり新しいプロセスを導入する場合、影響範囲が大きい場合はリスクがあります。また、新しいプロセスで本当に効果が得られるのかも不明確です。そのため、リスク回避と効果確認のためDTOで先に導入効果を確認することで実施の判断や、何の課題から解決するのか、実施の優先順位付けなどを行うことができます。

無料で使えるCelonis Snapを使ってみよう

Celonisには、無料で利用できる「Celonis Snap」があります。プロセスマイニングツールを導入するイメージが沸かない場合や、どのような分析結果になるのか確認したいという場合に活用すると良いでしょう。

Celonis Snapの始め方

  1. 無料版にサインアップします。サインアップ処理には3分ほどかかります。
  2. アクティベーションなどを行います。
  3. サインインすると、英語で表示されているため言語設定を変更します。
    自身のアイコンをクリックし「Edit Profile」「Edit Language & Timezone」を選択し、日本語に変更します。
    (ただし2022年6月時点では言語設定が反映されません)
  4. 言語設定画面からは「チームの選択」でホーム画面に戻ります。
  5. ホーム画面にはデモが用意されているためすぐに画面の操作やイベントの動きを確認することができます。
  6. 「Getting Started」でProduct Tourを確認したり、Upload and Analyze your dataで自身のデータをアップロードしたりすることができます。

ハンズオンガイド付きチュートリアルを確認するとデモデータの理解が深まります。
また、無料のオンライントレーニングも用意されています。

まとめ

プロセスマイニングについて、メリットやデメリット、ツールなどを紹介してきました。生産性向上やDXの推進を成功に導いてくれる要素のひとつであるプロセスマイニングは、有償ツールの場合は導入コストと人員コストがかかり、無料ツールを使用したとしても、人員コストがかかります。そのため、中長期的な視点で捉え、費用対効果などを見極め導入の判断が必要となります。紹介した無料ツールから初めてみるなどで感触を掴み、さらに踏み込むかどうかなどの判断を行っていくと良いでしょう。

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