生産性向上の勘所

経営者や部門のマネージャーにとって生産性は気になる数字のひとつです。マネジメントをする立場なら「生産性を高めたい」と誰もが思いますが、そのための方法にはどういったものがあるでしょうか。

IT企業であれば、プロジェクトマネジメントに関係する問題から生産性が落ちる傾向があり、この部分への対策がポイントとなります。この記事では、生産性向上のヒントとなる事例を紹介します。

1.生産性とは

まず、「生産性」について確認しましょう。

「生産性」とは、投入量(インプット)に対してどれだけの産出量(アウトプット)を生み出すことができたかを数字にしたものです。モノを作るにあたり、生産に必要な要素がどれだけ効率的に使われたかを示します。

「生産性=アウトプット/インプット」

と表すことができ、アウトプットやインプットに入れるデータによって、さまざまな生産性を表すことが可能です。生産性という形で生産効率を数量化することによって比較や改善のための指標として使うことができます。

主な生産性指標にはアウトプットに生産量を取る「物的生産性」付加価値を取る「付加価値生産性」があります。物的生産性、付加価値生産性は、インプットに何を取るかによって、「労働生産性」や「資本生産性」、「全要素生産性」などに分けられます。

生産性を検討する際は、業種や経営課題によって重視するべき生産性の種類が違ってきますので、経営者や管理者がよく検討することが必要です。IT系の企業なら、技術力や効率を表す「付加価値労働生産性」が重要な指標のひとつです

以下、生産性向上の事例を紹介します。

 

2.生産性向上事例1 (飲食業)

2-1.概要

順調に成長を続けていた居酒屋チェーン店を展開するA社でしたが、ある時から従業員の退職が目立つようになり、事業拡大はおろか既存店舗の維持も難しい状況に陥りました。

問題に感じた経営陣がコンサルタントに依頼し、経営データから分析を行ったところ、各店舗で売上高は上がっているものの、利益の減少が見られました。特にここ数年は、従業員1人あたり利益(=付加価値生産性)の落ち込みが大きくなっています

現場調査を行ったところ、訪日観光客の増加によって接客に時間がかかっていることがわかりました。売上を維持するため人員増を行った結果、一人あたりの利益は下がっていたのです。

 

2-2.対応

そこで、経営陣は労働量(人・時間)1単位あたりの、利益ならびに接客数の向上を目標に定めました。目標数値に近づけるために、従業員やアルバイトへの外国語の研修を導入し、店舗には外国語メニューやポスターなどの掲示物を作成して配布しました。一部店舗では、実験的にタブレット端末による多言語メニュー表示や注文のシステムも導入するといった対応を行いました。

 

2-3.結果

目標とした数字に改善が見られ、店舗の利益も回復しました。また、取り組みに対し従業員からの評価が高く、ロイヤルティ向上の向上で退職率が低下。多くの店舗で人手も余り出したことで、店舗の拡大がスムーズに進められるようになりました。

 

2-4.ポイント

  • 労働量1単位あたり付加価値生産性の向上=店舗の利益率の向上を意味する
  • 労働量1単位あたり接客数(=物的生産性)の向上=店舗のキャパシティの増加を意味
  • 数字をもとに現場の問題点を調査・分析したことで、効果的な改善につながった

 

3.生産性向上事例2(ソフトウェア開発業)

3-1.概要

B社は業務用アプリケーション開発をメインとするソフトウェア開発業です。資金繰りの安定を目的に、開発短期化を目標とした生産性向上の取り組みを始めることにしました。

ソフトウェア制作では、完成・納品時まで入金が行われないケースが多く、スタートアップや中小企業ではその間の資金繰りを金融機関からの借り入れに頼る場合もあります。開発の短期化で借入額が小さくできれば、キャッシュフローの改善や支払い利子の減少が可能です。

生産性を計るための指標として、四半期単位での納品数と売上高(入金ベース)から物的生産性、付加価値生産性を測定し、まず1年かけて改善を行うことにしました。

 

3-2.対応

生産性の各指標で10%の向上を目標に、業務フローの見直しや改善のための議論を全社的に推進しました。営業段階で分割納品の提案を行うことや、プロジェクトマネジメントの標準化が案として上がり、具体的な施策として「営業部門への教育や提案例の作成」「PMOの設置」「プロジェクトマネジメントについてのマニュアル整備」を決定。決定項目はPDCAを行いながらブラッシュアップを続けました。

 

3-3.結果

四半期ごとに改善効果が見られ、1年後には前年比で、四半期の納品数で13%、売上高で40%の改善が見られました。キャッシュフローに余裕が生まれ、借り入れにほとんど頼らずに済むようになりました。

 

3-4.ポイント

  • 生産性の数字目標を具体的に定め、業務フローの改善へ取り組んだこと
  • 作業の標準化によるQCDの改善(教育、マニュアル作り、PMOの設置)

 

4.生産性向上事例3(Webサービス開発業)

4-1.概要

Webサービスの企画・開発を行うC社では、プロジェクトマネージャやWebディレクターなどのマネジメント職を中心にスタッフの長時間労働が大きな問題となっていました。マネジメント職では顧客への提案・報告業務や、マネジメント業務で、残業や休日出勤が多くなっていました。正確な労務管理ができていないことが大きな問題で、労働時間には表れない労働を含めると、月間300時間近く働いている従業員も複数名いるとの声も聞かれ、改善が急務となっていました。

 

4-2.対応

労働時間の把握にまず取り組み、従業員の労務時間の測定を行ったところ、入力内容と事実に相違があることがわかりました。勤怠管理はエクセルファイルに各従業員に入力して毎月末に提出していましたが、月末や手隙のタイミングにまとめて入力が行われており、不正確な入力が多いことが原因でした。そこで、クラウド型の出退勤管理システムを導入し、日々の入力を管理者がチェックし、不要な残業の発生についても指導を行いました

また、過去の案件データから、業務フローを見える化し、ボトルネックが生じやすい部分や担当者による品質・納期の差が大きい部分をリストアップし、対応をマニュアル化しました。

業務時間の使い方を調査したところ、プロジェクトマネージャやWebディレクターが社内の役職者を兼務しているために、会議や決裁など社内マネジメント業務に大きく時間を取られていることが判明。個人面談を実施し、制作現場のマネジメントに携わる人と、役職者として部署や全社のマネジメントを行う人を分け、コア業務に集中できるよう組織変更を行いました。

 

4-3.結果

取り組みの結果、マネジメント職1人あたりの月間の労働時間が取り組み前より30時間減少し、他従業員も平均15時間ほど労働時間の削減に成功しました。その間もC社における受注数や売上額は微増を続け、社内には以前よりも活気が出てきています。

 

4-4.ポイント

  • 即日入力や、入力のチェックによる、申告労働時間の精度向上
  • 生産性に関わる要因(ボトルネック、コアでない業務)への対策

 

5.まとめ

この記事では生産性の定義と生産性を向上させた事例を紹介しました。生産性を指標として用いることで、定量的な業務改善を行うことができます。

生産性向上のためには、生産性を産出するためのデータをしっかり取得し、リアルタイムに集計・見える化することが効果的です。そのためには、プロジェクト管理ツールやBIツールなどの活用が効果的です。

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